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深草散策

『ラ・イストリア』の作業は今週ですべて終わり。というわけで、京都へ行ってきた。龍谷大学の大宮図書館で調べ物をするのが目的だったんだが、ちょっと足を伸ばして伏見区深草まで。7年間大学におったうち深草学舎に通ったのは最初の2年間だけで、残りの5年間は西本願寺境内にある大宮学舎に隔離されていたんだが、住居は在学中から卒業後もずっと深草であった。デビュー後、時々図書館に調べ物に行ってはいたが、深草近辺をお散歩するのは6年と数ヵ月振りである。

 うわー懐かしー、と京阪深草~藤森~近鉄竹田の範囲をぐるぐる歩き回る。あー、あの店もあの店もなくなってる、バイトしてた店はまだある(げ、店長まだおるやんけ)とか。軽くショックだったのは、幾つもあった小さな書店がことごとく閉店していることであった。最後の一軒に至っては、今まさに閉店作業の最中だった。そうして晴れ渡った空の下を3時間近くも彷徨した後、深草学舎へ行く。新しくなった生協書籍部に立ち寄ってみる。私の本は置いていない、のはまあいいとして、ハヤカワ文庫のコーナー自体が存在しない(電撃とかスニーカーのコーナーはあるのに)。「大宮バス」で大宮学舎へ。学部時代のゼミ教官であったK先生を訪ねる。

 K先生と再会したのは、昨年夏。1998年の卒業以来、連絡すらしていなかったので、調べ物に行ったついでに、挨拶に立ち寄ったのだった。「必要と判断した時以外、自分の職業は明かさない」ことにしているが、この時は必要云々以前に、明かしたらやばいと思っていた。授業中、日本人作家が書く中国歴史小説に先生が一度ならず苦言を呈していたことは、よく憶えている。歴史をネタにしたSF(しかも次作予定の『ミカイールの階梯』は中央アジアが舞台だ)を書いてると知られたら、間違いなく不興を買うと怯えていたのである。で、8年振りに研究室に顔を出した私を見るなり、先生はおっしゃった。

「ああ、きみか。えーっと、SF書いてる?」

 ぎゃーっ、なんで知ってるの?

 正確には、先生は知っていたわけではなかった。その数ヶ月前、龍大広報部からインタビューの申し込みがあった。それは断ったんだが、広報部の人は私に連絡を取るより先に、K先生に質問しに行ったのだそうだ「東洋史専攻の卒業生でSF作家になった人がいるんだけど、心当たりはありませんか」。理由は、「K先生のゼミには、変わった学生が多いから」。どういう理由だ。そして先生は、卒業年も本名も不明だというのに、「そういうことをするのは、きみしかいないと思ったんだよ」。

 なんでそんな根拠で私だと確信するんだ。しかも当たってるし。在学中、私は小説を書いていなかったし、小説家になりたいと公言もしていなかったし、課外活動(映画撮ったり、演劇やったり)のことは先生は知らなかっただろうし。当時も今も、私の自己イメージは「地味で目立たなくて、他人の印象に残らない」なんだけど。先生が、担当した学生のことは皆憶えているのかというと、そうでもないようだし。ほかにお会いした先生方も、すぐに私のことを思い出してくれたしなあ。たぶん、協調性がないから悪目立ちしてたってところなんでしょう。いずれにせよ、憶えていてくださったのはありがたいことです。

 しかしある意味それ以上に驚いたことに、K先生は元SFファンなのであった。今回と前回とで、四人の先生にお会いしたのだが、全員が元SFファンであらせられた。そして全員が二言目に「もう20年(ないし30年)SF読んでないけど」。三言目に「SFマガジンってまだ出てたの?」。……そういうわけで今回は、「ほら、SFマガジンですよ、ほら」と見せに行ったのであった。「これ、くれるの?」「あげませんよ、これは私が貰ったんだから(「謹呈」の判子が押してある)。御自分で買うてください」私なりに販促活動をしたつもりです(なってるのか?)。

 それから図書館に行ったんだが、目当ての資料は、すでに知ってる内容ばかりで役には立ちませんでした。ちっ。

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