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LA CALACA

『ラカラカ』。CALACAの意味が、調べても判りません。それはともかく。

 フリーダ・カーロの話、では全然ない。メキシコの海辺に女が一人住んでいて、彼女の名はフリーダといって顔もフリーダ・カーロそっくりなんだが、それについてなんの説明もない。フリーダは骸骨たち相手の下宿屋を営みながら、夫の帰りを待っている。夫(ディエゴという名)は海にさらわれ、行方知れずだ。彼女は夫が骸骨になってでも帰ってきてくれると信じている。

 この作品を知ったのは『ラ・イストリア』の執筆中だったんだが、メキシコものを探していたとかそういうわけではなくて、ある日ふと「そういえば澤井健って、もう漫画は描いてないのかな」と気になり、ネット検索して発見。私が知らなかっただけで、04年の刊行でした。いくら澤井健の絵でフルカラーでB5判だからって、100頁足らずで1800円てのはちょっと高いんだが(量の問題じゃないけどさ)、まあともかく。

 登場するのは骸骨ばかりだが、とても美しい作品。肉を完全に失い、漂白された骨の美しさ、海の波に削られ磨かれた石やガラスの美しさだ。メキシコの骸骨たちは陽気だが、それでも死の静けさを併せ持っている。騒擾と静謐の並存。チョコレートのエピソードには笑った。作中ではなんの説明もされていないが、フリーダ・カーロはディエゴ・リベラより三年早く死んでいる。死者が帰ってくる国メキシコで、「死んだ」夫ディエゴを待つフリーダは、果たして死者なのか生者なのか。物語の最後に、生と死は多層の円環を成す。

 ところで澤井健は、今は映画秘宝のエッセイだけなんだろうか。確かに文章もおもしろいんだが、折角だからもっとイラストをメインにした仕事もしてもらいたい。コミックエッセイは……ちょっと違うか(それ向きの絵ではない気がする)。

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