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パイレーツ・オブ・カリビアン

 AT WORLD'S END. もっと早くに観にいきたかったんだが、いろいろ予定が狂って今頃鑑賞。ベケット卿の圧制の下、カリブの民衆が次から次へと絞首刑に処されていく(女子供まで)容赦ない幕開けに、いやが上にも期待が高まる。最大の見せ場である巨大渦潮でグルグル回りながらの砲撃戦は、実に素晴らしい。

 でもそこまでに至るのが、なんぼなんでも長すぎる。1作目も2作目も脚本にはなんの不満もなかったが、今回は今一つ……いや今二つ、三つ……。カリプソの伝説とか、まったく機能してない。機能していないことを笑いに転化する機能を果たしているなら、いっそ大したものだけど、ただ漫然と放置されているだけだ。女神とか海賊王とか、そういう後付設定は要らんから、前作までと同じく阿呆だけど抜け目ない海賊と、腹黒いけど間抜けな東インド会社の(もちろん海賊同士でも)騙し合いとチャンバラとドンパチに徹してほしかった。あれだけたくさんの船を揃えておきながら艦隊戦がないなんて、がっかりですよ。

 だいたい、海賊のくせに「自由のための戦い」なんてお題目を取って付けるから鬱陶しいことになるんだ。しかもそのお題目を唱えるのがキーラ・ナイトレイか。彼女の前作や『ドミノ』のような「身の丈に合わないことをしている小娘」という役どころは結構好きだが(1作目の「清楚に見えて実は図太いお嬢様」というのは身の丈に合っていた)、なんぼなんでも今回は持ち上げられすぎ。

 一番よかったのはバルボッサ船長のジェフリー・ラッシュ。その彼が林檎を食べるシーンがないというだけで、今作の点数は下がる。チョウ・ユンファは、なんだか『バットマン・ビギンズ』の渡辺謙みたいな役どころだったな。或いは『ジェヴォーダンの獣』のマーク・ダカスコスの出番を半分以下に削ったみたいな。

 オーランド・ブルームは、妙に優等生的というか「いい子」な役者になりつつある。『ロード・オブ・ザ・リング』の撮影時のエピソードは、おもしろい役者に成長するんじゃないかという期待を持たせてくれたし、何より『トロイ』のヘタレ振りは素晴らしかったんだが(私はヘタレを演じるのが巧い役者は、ほかのどの条件にもまして高く評価します。現実のヘタレは嫌いですが)。ハリウッドに於いて役に恵まれないというのは、彼に限らずイギリス出身の美形(に分類される)男優の宿命みたいなものかもしれない。

 ジョニー・デップは世間的にはすっかりジャック・スパロウのイメージが定着してしまって、以前からのファンとしては少々複雑な心境です。いや、あの役は好きだし、デップも一つの役で人気が出た俳優にありがちな「以後、似たような役ばかりを求められる」という状況に陥るどころか却って以前より役の幅が広がってますがね。しかしそれでもなお、従来のファンにとっては、ジョニー・デップがメジャーという状況は「何かの間違い」のような気がしてしまうのです。従来っつっても、90年代半ばからだけど。

「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉」感想

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