スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
おもしろかった。こういう和製○○みたいなのんは演劇や自主制作映画なんかでやると、その「ばったもん臭さ」が大変よろしかったりするわけだけど、商業映画でやると、ひたすら滑って寒いものになりかねない。『ジャンゴ』はキャストもスタッフも、全力を挙げて「ばったもん臭さ」を作り上げようとし、成功している商業映画だと思う。刀で銃弾跳ね返すのは、日本人ならやってみたいよね。
脚本はマカロニ・ウエスタンに忠実だし、美術や衣装もきっちり統一感を出せている。ただ、癖のあるキャラクターが多い割には活かしきれてないし、盛り込まれてる小ネタが、思い付きで放り込んだだけの、その場限りのものばかりだったのが、難と言えば難だ。例えば『ヘンリー六世』は、薔薇戦争を引き合いにして源平合戦の構図を欧米人に理解し易くするために出されたとしか思えない。ネタを出したからには、平清盛やその手下たちをキャラ立ちさせるのに、もうちょっと活用できなかったものか。ほかにも『アキラ』とか、香川照之の「ゴラムごっこ」とか、「……だから?」という感じ。いや、ゴラムごっこは、ごっこ呼ばわりが失礼なくらいの「芸」の域に達していたが、でも、「……だから?」。「なんじゃ、こりゃあ!」も笑いはしたけど、でもなあ。それと、弁慶を立ち往生させなくてどうする。
この作品は、衣装とメイクがキャラクター作りにかなり貢献している。ああいう衣装を、しょぼいコスプレみたいにせずに、ちゃんと役者に着せて、それを各々のキャラクターの要素としている、つまりアニメや漫画みたいにキャラクターデザインができているということだ。もちろん悪い意味でアニメや漫画みたいと言っているのではない。役者自身の容姿、衣装、メイクを含めたデザインは、確実にそのキャラクターを構成する要素だし、映像を構成する要素でもある。その辺が無自覚な映画が多いような気がする。
で、役者もそれぞれの衣装に見合った演技をしてるわけだが、肝心の脚本がそれらキャラクターを活かせてないんで、もったいないんだよなあ。
しかし何はともあれ、キャストがみんな力一杯なので観ていて楽しかったです。私は、役者が普段やらないような役に挑んでいるとそれだけで評価が高くなるんだが、たぶん、いや間違いなくキャストたちが『ジャンゴ』と同じような役をやる機会はもう二度とない。タランティーノは、ちゃぶ台返しがさまになってたなあ。木村佳乃はああいう衣装で「妖艶な女」を演じるにはちょっと痩せすぎだが、とにかく身体を張って頑張ってるし、そういう似合ってなさが「ばったもん臭さ」の要素になってるとも言える。桃井かおりがかっこよかった。
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