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エンリケ・クッティーニ楽団

 伊丹アイフォニックホールにて。ピアノ、バンドネオン、ヴァイオリン、コントラバスの四重奏。ほかにヴォーカル一人(男性)とダンサー四人。

 演奏はかなり即興的で、時にはほとんどセッションみたいな雰囲気だった。ステージも客席もあまり広くなかったので、臨場感が伝わってくる。奏者のうち若いのはコントラバスだけで、ピアノ(クッティーニ)とバンドネオンはかなりの高齢で70にはなっていると思われる(ヴァイオリンの人は年齢不詳だった。髪は白いのに顔は結構若い)。なのにこの二人が一番元気だった。私の後ろに座っていた年配の男性が、しみじみと「ピアノのおっちゃん、元気やなあ」と感嘆していた。そういうステージでした。

 曲目は、いわゆるアルゼンチン・タンゴだけでなく、コンチネンタル・タンゴやタンゴ風シャンソン、それに「ベサメ・ムーチョ」までも。アルゼンチン風にアレンジされていて、なかなかおもしろかった。なぜか一曲、ベネスエラのワルツも含まれていて、これは原曲を知らないので、アレンジされてたかどうかは不明。ヴァイオリンの人はベネスエラの民族楽器(小さなギターみたいな楽器)に持ち替えてたし。それらを除いても、初めて聴く曲が多くて楽しかった(ピアソラ以外のタンゴは、ごくスタンダードなナンバーしか知らないのです)。

 ピアソラは「フーガと神秘」「ブエノスアイレスの春」「リベルタンゴ」の3曲で、いずれもダンス付き。ピアソラは基本的に「聴かせるタンゴ」なので、ダンスに向いた曲は少ない。とはいえショーとなれば、いくらでも振り付けはできるわけで、今回の3曲はかなり現代的な振り付けだった。特に続けて演奏された「ブエノスアイレスの春」と「リベルタンゴ」は衣装も伝統的なものではなく、男女とも黒ずくめで男性はメッシュのTシャツにカーゴパンツ、女性はちょっとボンデージ風。1曲か2曲くらいは、こういうのがあってもいい。

 相変わらず、男女が踊っていると女性ダンサーしか目に入らない。バレエとかでもそういう傾向があるけど、特にタンゴの場合は男は「黒子」だと認識してしまうようだ。男が女をリードして「踊らせる」のがタンゴだから、この認識はかなり正しいんじゃないかと思う。男しか踊ってない時は、もちろん男を観るけど。今回は男同士で踊るパートもあって、おもしろかった(最初期のタンゴは男同士だった)。

 このコンサートは、アイフォニックホールで毎月催されている「地球音楽シリーズ」という企画で、11月はアンデスのフォルクローレ、12月はゴスペル、と非常に興味を惹かれるのだが、私自身にもはや心の余裕(1ヶ月以上前から予定を立て、チケットを予約し購入する余裕)が失われているのでした。9月半ばの時点で、予約したチケットの代金を払ったかどうかどうしても思い出せなかったり(思い出せないでいるうちに、チケットが郵送されてきた)、チケットをうっかり捨てそうになったりして、かなりやばい状態だった。今回のチケットを買ったのはその時だっけか、もう少し前だっけか。とにかく10月末までには頭がすっかりシルクロードとロシアになっており、「タンゴ? もうどうでもいいよ」という心境だったのを、いや、どうでもいいじゃなくてさ、行かなかったら絶対後悔するんだから行っとこうよ、と自分で自分を説得して、どうにか会場に赴いたのでした。行ってよかったけどね、ほんまに。

 それにしても、タンゴのコンサートは最後の出演者挨拶と客出しのBGMが、ほぼ必ず「リベルタンゴ」だなあ。

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