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白い果実

 ここのところ更新頻度がやや上がっているのは、以前は記事を一度に書いていたので、まとまった時間が取れる時しか書けなかったのを、ちょっと時間がある時にちょっとずつ書くようにしてるからである。というわけで『白い果実』。ジェフリー・フォード著、金原瑞人・谷垣暁美による訳を山尾悠子がリライト。

 第一部は素晴らしい。主人公がヘタレで、しかもただのヘタレではなく、ものすごく嫌な男なのである。第二部は主人公が改心してしまうのでがっかりだが、イメージの点描は上質。第三部はガクンと凡庸。訳文までもが同じ経過を辿る。朝から読み始めて、昼過ぎに読み終えた時には非常に意気消沈し、その日はそのまま仕事に手がつかなかった。こういうことがあるから、小説を読むのは苦手だ。

 やっぱり何がよくないって、主人公が悔い改めて真人間になってしまうことだろう。ヘタレは後悔や反省はしても、成長できないからこそヘタレなのである(打たれ強くなるのは可)。成長してしまったら、それはもうヘタレではなく別の何かだ。この世界を支配する「観相学」が、あまり活かされていないのも残念。歪んだ世界で歪んだ主人公が振り回す歪んだ学問として素晴らしかったのに、第二部以降は単なる似非学問以下に引き下げられてしまうのがつまらない。

 第三部の舞台となる「理想形態市」も、その名称にかかわらず活写されているとはいえない。ただ、なんとなくイメージされたのは、ファイナルファンタジー・シリーズにしばしば登場する極度に人工的な大都市だった。乗り物とかショップとかいろいろ揃ってるんだけど、住むのは不便そうな。その程度の独創性だということなんだろうが、それを山尾悠子の描写(精彩を欠くとはいえ)で読めるのは、結構貴重かもしれない。

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