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ナイトウォッチ

 セルゲイ・ルキヤネンコ著。映画は一昨年、DVDで鑑賞。

 映画のほうがおもしろかった気がする。小説のほうは長編といっても、独立した中篇三本から成り立っていて、映画はその最初の一本を膨らませてるわけだから、当然ディテールは凝っているのだ。設定も変えてあるだけでなく、原作で活かせていない設定を巧く使いこなしている。たとえば、敵対する者同士のなんとなくの馴れ合い(「光」のエージェントが「闇」のエージェントと同じアパートのお隣同士で物を貸し借りしたりする)や、日常の重さ侘しさ、さらにはしょぼさといった、実にロシア的な要素である。原作にもあるにはあるのだが活かされていないそれらを、映画では丁寧に拾い上げている。映像の力に拠る部分もあるのだろうが、やはり脚本と演出がよいのだろう。

 原作の欠点がそのまま反映されている部分もある。オリガが梟である必然性がまったくないところとか。そもそも原作の重大な欠点の一つは、キャラクター小説として書かれるべきなのに、各キャラが全然立っていないことだ。それは映画にもそのまま当て嵌まる。意図的にやってないとか、やろうとしたけど出来なかったとかいうより、キャラクター性という概念が欠如している気がする。敵のボスはなかなかキャラ立ちしていたが。それに主人公のアントンが青年からおっさんになっているのは已むを得ない変更だとしても、ヒロインに全然魅力がない女優を起用するのは問題だろう。あれが監督の好みなのかもしれないが。二つの事件が平行して進むのは原作も映画も同じだが、原作では一応その必然性があったのに対して、映画では必然性がなくなってしまっているので、散漫な印象が強くなっている。

 善悪の境界の曖昧さは、後の二つの中篇にも共通している。エピソード3の光のエージェントたちが別荘に集まって飲んだりやったりと風紀の乱れた一夜を過ごすのだが、まったくオルギア的ではなく、ひたすら物憂げなのもまたロシアっぽい。

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