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女王陛下の戦士

 最近、映画を観に行く気が起きないのは、やはり夏の暑さのせいであろう。神戸よりはマシなんだが、家から駅までが遠いんだよ(十分足らずだったのが倍に)。そして横浜の映画館も川崎の映画館も、駅から数分とはいえ炎天下を歩いていかなきゃならないんだよ。
 もう一つの理由は、現在の近所のレンタルビデオ屋の品揃えが充実していることだろう。加えて、以前は父が「単純なアクション映画」ばかり観たがるので、毎週揉めていたんだが、本人が気づいていなかっただけで意外に嗜好の幅が広いことが判明し、本人も自覚するようになって私や妹Ⅱの選択に任せてくれるようになったのだ。
 というわけで、観たかったけど観られなかった作品が数多く観られるようになったので、つい新作から足が遠ざかってしまうのであった。

 ポール・ヴァーホーヴェンの1977年の作品。ヴァーホーヴェン作品でこれまで観たのは『スターシップ・トゥルーパーズ』と『ブラックブック』だけ。まあハリウッド時代のんは『ST』一作で充分な気がするが。
『ブラックブック』で描かれているのは第二次大戦中のオランダのレジスタンスの暗部だが、ヴァーホーヴェンがそれについて知ったのは『女王陛下の戦士』のリサーチ中である。しかし70年代当時、レジスタンスは絶対的なまでに英雄視されており、それに反する視点を作品に盛り込むのは不可能だったという。

 ということを予め知って観ると、『女王陛下の戦士』の妙にちぐはぐな不徹底振りが納得できる。以下、ネタばれ注意。

 原題は「オラニエ家の戦士」で、女王陛下というのはイギリスに亡命したベアトリクス女王のことだから、妥当な邦題だな。こういう勇ましいタイトル(原作は主人公エリックの自伝らしい)の割には、前半はナチス侵攻までのお気楽な学生生活と侵攻後のどたばた、後半、ようやく主人公がイギリスに亡命して、女王の指令による作戦に従事するんだが、これも主に要領の悪さから無惨な失敗に終わる。仲間が次々死んでくのに、主人公はイギリスの女性士官とうまいことやって(しかも作戦の失敗で殺された仲間の元恋人だ)、空襲に出撃(一回だけ?)しただけで英雄扱いとなる。何か釈然とせんぞ。

 まあその、自伝というのは生き延びた人間が書くものであって、それを映画化によって「他者」のフィルターを通すことで、多かれ少なかれ矛盾が見えてしまうものかもしらんな。これに限らず、自伝(戦争物に限らず)の映画化作品って、何か釈然としないものを感じてしまうのんが多いからな。

 長大であろう原作の、どこを取り上げるかは監督の裁量だったのか、ことさらにヒロイックでないエピソードばかりが取り上げられている気がする。侵略による悲惨な災禍と、対照的に直接被害を受けていない地域の他人事振りとか、レジスタンス活動を始めようとする主人公たちの要領の悪さが招く、コミカルな結末と悲惨な結末の対比とか。
 とにかく素人レジスタンスの危なっかしさは特筆に価する(『ラスト、コーション』を思い出した)。そして悲惨さをスラップスティックに描く手法、エログロ、さらにはスカトロジーはすでに全開である。というか、汚物に関しては『ブラックブック』と『ST』では全開じゃなかったんだね。いろんな意味で、『ブラックブック』へと繋がる作品なのでした。

 ルドガー・ハウアーが若い! そういえばオランダ時代の彼を見るのも初めてなんだった。なんかキラキラしてる。調べてみたら、何人かの役者が『ブラックブック』に出演してました。主人公の親友で、親衛隊に入ったはいいけど便所に入ってるところに手榴弾を投げ込まれて爆死した奴とか。

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