カルラ
『グアルディア』の「表」ヒロイン。金髪碧眼、白皙の「天使のように」美しい少女。メキシコ北西部、西シエラ・マドレ東麓のサン・ヘロニモ村で生まれる。父の名はミゲル。2540年4月、北から訪れた青年「JD」と出会う。この時11歳だったので、生年は2528年か2529年。
JDと共に北の荒野ガリシアへと赴き、消息を絶つ。2643年7月、二人はアンデス山脈の赤道地帯に姿を現す。JDは103年前と少しも変わらぬ姿であり、カルラは5、6歳の童女の姿で、彼を父と呼んでいた。この二ヵ月後から始まる『グアルディア』本編では、彼女は8歳の少女の姿をとっている。
失踪した時点ではごく普通の少女だったはずだが、JDの「娘」となったカルラは高い戦闘力や不死身に近い再生力といった超常の力を持っていた。しかしその力は「父」であるJDには及ばず、常に守られる立場である。一方で、JDの力が暴走した時、制止できるのは彼女しかいない。また、JDが自らの遺伝子の発現を調節することによって容姿をある程度変化させる(色素を薄くするなど)ことができるのに対し、カルラは肉体年齢を変化させるのみで、容姿そのものは変わらない。年齢の変化も、0~11歳に限定される。
肉体年齢の変化に精神年齢も対応する。記憶や知力はそのままだが、あまり影響はなく、やや大人びた印象を与える程度。
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以下、ネタばれ注意。
Carlaという名は、スティーヴン・キングの『ファイアスターター』のヒロイン、チャーリー(正式にはシャーリーン。スペルはCharleenかCharlene)から。年齢(7、8歳)と容姿(金髪碧眼の華奢な美少女。『炎の少女チャーリー』ではない)はもちろんのこと、「父」との関係性も、守られる立場の娘のほうが実は強い、という点に於いてはそのまんまである。悪の組織に狙われるところもね。
カルラの生まれ故郷であるサン・ヘロニモ村は、2540年当時、中米最北端の村だった。ちなみにこの村から南へ騎馬で1、2日の距離にある自治都市(すなわち最北端の都市)レオンLeónは、現在のメキシコ・グアナファト州レオン市と(ほぼ)同位置。
サン・ヘロニモ村から先は、北米との境界を成す死の荒野ガリシアである。2250年代に始まった第二次南北アメリカ戦争によって汚染され、人も獣も足を踏み入れることができない。
サン・ヘロニモの少女カルラは、ガリシアの地で死んだ。JDの「娘」として蘇った彼女は、果たして「生前」のカルラと同一人物なのか。作中では、特に区別を付ける場合は、後者を「ミゲルの娘」または「カルラ・デ・サン・ヘロニモCarla de San Jerónimo(サン・ヘロニモ出身のカルラ)」と呼ぶことがある。
父娘となったカルラとJDは、荒廃した世界を百年にわたってさ迷う。その過程で想像を絶する体験をしているはずだが、それが人格形成にほとんど影響していない。ドメニコ一族のメトセラたちが悲哀や絶望を蓄積させていくのとは対照的である。
精神的に成長する(老いる)ことがないのと関連して、JDもカルラも物事を深く考えない傾向がある。ただしJDの場合は本来(着用者となる以前)の性格付けがそのように行われているのに対して、カルラは年齢を幼く保つことで、その性向を保っていると思われる。
ミゲルの娘カルラとJDは、互いに一目で恋に落ちる。カルラがJDの娘として再生した後も、互いの恋情は保たれる。しかしJDが恋と肉親の情の区別にまったく無頓着であるのに対し、カルラにとって父娘姦は絶対の禁忌である。彼女が5、6歳の姿でいることを好むのは、そのくらいの年齢ならば恋情と父娘の情を未分化の状態で保っていられるからであろう(それ以上幼くならないのは、行動に制約が多くなるからだと思われる)。
因みに私は金髪碧眼という記号にまったく興味がないが、12、3歳以下の美少女は例外である。だからカルラが成長してしまうのは、個人的にはすごくがっかりなのだが、物語がそうである以上は致し方ないのであった。なお十代後半という年齢は、生物学的な妊娠・出産適齢期である。生物である以上は、未熟な肉体での妊娠・出産はやっぱり効率が悪い(負担が大きい)だろうと考えた次第である。
アンヘルはカルラに対し「美しいな。わたしとはまるで違う」と述べる(第十一章)。「まるで違う」ということは、表裏の関係にあるとも言える。
ブランカというキャラクターによって、生体端末たちは生体甲冑というガジェット(JD個人ではない)と結び付けられた。2540年のカルラとJDの事件によって、アンジェリカⅢはブランカの記憶をフィードバックさせ、自ら調査に赴く。その調査記録によって、アンヘルは2643年、JD父娘に関心を抱く。
またブランカとカルラ、そして生体甲冑は、カロリーヌ・ティシエという人物によって結び付けられている。
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