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カンダハール

 2001年制作。監督はイラン人のモフセン・マフマルバフ。

 主人公ナファズ役は青い目をした綺麗な人だが、女優ではなく、役柄と同じくアフガンからカナダに亡命したジャーナリスト。アフガンの亡命者が一人の人間を救い出すために祖国に戻る、という物語は、カーレド・ホッセイニの『君のためなら千回でも』とも共通している。

 どちらの作品でも、主人公が祖国へ戻る行為は、贖罪の意味を持つ。誰かを「救い出す」という目的によってではなく、祖国へ戻るという行為そのものが贖罪なのである。『カンダハール』が主人公を演じたジャーナリストの実体験に基づいており、『君のためなら千回でも』がフィクションだという違いはあるが、それで一方が他方に優るというものではない。ただし、『君のためなら』は原作についてである。映画版では後半の主人公の行為から贖罪の意味合いが薄められ、別に亡命者ではなく「欧米人のヒーロー」でも構わないような役柄になってしまっている。

 背景は重苦しいが、至るところに(ややブラックな)笑いが『カンダハール』にはある。女性が医師(男性)の診察を受けるのはカーテン越しで、直接口を利いてもいけないから(互いの声は聞こえているのに)子供が取次ぎをするとか、医療キャンプに落下傘で投下されるたくさんの義足とか、「過酷な現実」が背後にあるのは確かなんだが、光景そのものは非常にシュールだ。

 劇中、登場する医師は、実はソ連と戦うためにアメリカから来て、そのまま留まったブラック・ムスリム、という設定なのだが、本人が名乗るまで黒人だということすら気づきにくい。それほど濃くない肌の色と付け髭のためというより、現地にすっかり溶け込んでいる印象――少なくとも仕草や表情がもはやアメリカ黒人ではない――なので、実際にアフガンに長く在留している人なんだろうな、と思ったんだが、この人も役柄と同じ経歴の持ち主なのだそうである(医者をやってるかどうかまでは不明だが)。世の中にはいろんな人がいるなあ。

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