ワルキューレ
「ワルキューレ」を英語では「ヴァークリー」「ヴァークレー」といった感じで発音するのを知り、ちょっと驚く。そっか、「ヴァルキリー」じゃないねんな。
映画を観る(スクリーンでもDVDでも)のはすごく久し振りである。最後にDVDで観たのは偶々『砂漠の鬼将軍』(『砂漠の狐』の映画化)で、この失敗に終わった暗殺計画もラスト近くに置かれている。そこでのシュタウフェンベルク大佐を演じた役者は、背の高いブロンドのおっさんで、傷を受けた片目と片手が、実際のシュタウフェンベルクとは逆だった。シュタウフェンベルクという名前も出なかったし、やはり「ドイツの英雄」をスクリーンに登場させるのは難しかったのだろうか。
『ワルキューレ』パンフレットに掲載の写真で見る限り、本物のシュタウフェンベクル大佐はブルネットで背もあんまり高そうでなく、顔立ちも結構トム・クルーズに似ている。でもやっぱりトム・クルーズはトム・クルーズにしか見えないのであった。
それでも周囲を固めている役者がとにかく重厚なのと、トム・クルーズをあまり目立たせない演出のために、「何をやってもトム・クルーズ」オーラは、この作品ではあまり邪魔にならない。トム・クルーズ以外の役者だったら、傑作と呼ぶに値する出来になってたかもしらんけどね。まあでも私は、いろいろとチャレンジャーなトム・クルーズは嫌いではない。
とにかくトム・クルーズ以外のキャストが重厚なのである。主だったところでも、ケネス・ブラナー、ビル・ナイ、トム・ウィルキンソン、テレンス・スタンプ。
ケネス・ブラナーは最後に観たのはハリポタ2であったが、あの時の軽薄さ(役作りだけど)に比べて、今回はまたえらく重量感があったんで、最後までケネス・ブラナーだと気づかなかった。
ビル・ナイのオルブリヒト将軍は、史実はどうだか知らないけど、作中ではよくこんな地位まで昇進できたな、というくらい神経の細い老人で、演じるのは随分楽しかっただろうと思う。
そのほか英米以外からのキャストだと、第二次大戦のドイツものでようけ見る顔が揃ってました。カリス・ファン・ハウテン(『ブラック・ブック』)、トマス・クレッチマン(『戦場のピアニスト』『ヒトラー 最期の12日間』『マイ・ファーザー』もこの括りに入るよな)。
クリスチャン・ベルケルなんて、『最期の12日間』『ブラック・ブック』と三作とも「禿のドイツ軍人」(しかも出番はあまり多くない)だ。キャラは被ってないけど。『最期の12日間』の時が一番よかったな。
私は「ワルキューレ」というアレなセンスの名称は、暗殺計画のものだと思っていたのだが、そうではなくて、国内予備軍の「ドイツ国内で反乱が起きた場合、それを鎮圧するためのプログラム」の名称でした。そのプログラムを利用した暗殺計画だから、「ワルキューレ作戦」なわけね。センスに問題があるのは、レジスタンスの人たちではなかったという。
ブライアン・シンガー監督作は、『X-メン2』以外は全部観てるはずだが、第一作の『パブリック・アクセス』(93年、サンダンス映画祭審査員グランプリ受賞)が一番おもしろかったなあ。傑作とは言わんが佳作だ。第一作でこれだけ撮れるんだったら……という期待感も加わった評価だけど。ウォシャウスキー兄弟もデビュー作(『バウンド』)はマトリックスよりずっとおもしろかったから、そういうものなのかもしらんけど。
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