太陽の帝国
刊行作業がすべて(私がやる分は)終わったので、再びDVD鑑賞する時間と心の余裕ができる。
で、映画版。87年、スピルバーグ監督作。原作はJ・G・バラードの自伝的小説。SFセミナーの準備のためにしばらくバラード期間だったんだが、これはSFセミナーが終わったら先に映画版を鑑賞しようと思っていたのである。
上海生まれの上海育ちの英国人少年が、中国人の使用人が運転する高級車で貧民の群れを掻き分けてハロウィーン・パーティーへ行くような生活をしていると、日本軍が攻めてくる。
英国人少年が収容所の環境に「適応」し、「大空への憧れ」を特攻隊員の少年と共有する。そのねじれを演じきっているクリスチャン・ベールがすげえ。当時13歳である。いったいどんな役作りをしたんだか。今の彼も巧い役者だが、『太陽の帝国』の時はとにかくすごい。顔はあんまり変わってないんだけどね。
そしてその「ねじれ」を解り易いお話に落とし込まずにそのまんま撮るスピルバーグもすごい。80年代によくこんな映画を撮れたものだ。06年の『硫黄島からの手紙』でさえ結構な驚きであり、しかもあれはその前に『父親たちの星条旗』を撮る必要があった。『太陽の帝国』の評価がそれほど高くないというのも頷ける。当時の観客には、このねじれは理解できまい。
原作は数ヶ月後くらいに読もうと思う。たぶん、『MILLENNIUM PEOPLE』の邦訳が出たら(出るってSFセミナーで聞いた)、『スーパー・カンヌ』と併せて読んだ後くらいに。
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