ウォンテッド
ジェームズ・マカヴォイ演じるへたれた兄ちゃんが、へたれた日常を送っていると、謎の美女アンジェリーナ・ジョリーに拉致されて、モーガン・フリーマンに銃を突き付けられて蠅の羽を撃てと命じられる。
蒸発した父親が実は凄腕の暗殺者で、組織の裏切り者に殺されたから仇を討てとか言われていきなり信じてまう主人公はどうかと思うが、まあ実際蠅の羽を撃てちゃったから信じるしかないと言ったところか。それ以上に、彼のそれまでの荒涼とした日常の描写がなかなか凄まじいんで、せやったら暗殺者のほうがかっこいいよね、という説得力はある。
というか、謎の美女がアンジェリーナ・ジョリーで、組織のボスがモーガン・フリーマンときたら、これはもう信じるよりほかないとでも言うべきか。
アンジェリーナ・ジョリーが老けメイク(監督の趣味?)で、何か異様な迫力だ。演技力がどうのというレベルをもはや超越している。
トーマス・クレッチマンは、ドイツものだと善いナチ(『戦場のピアニスト』)とか斜に構えたナチ(『ヒトラー最後の12日間』『ワルキューレ』)とか、父親の罪に苦悩するナチの息子(『マイ・ファーザー』)とかになるわけだけど、ハリウッドだとやっぱり悪人顔ってことになってまうのね。
『ナイト・ウォッチ』シリーズの主役(コンスタンチン・ハベンスキー)が端役で出張。
ネタばれとかどうでもいいような内容なんだけど、一応以下ネタばれ注意。
暗殺の正当化にどうにも賛同できないのは措いといても、「1人を殺して1000人を救う」というわりには巻き添えにする人や物が多すぎるのが気になって仕方なかったので、実は悪の組織でした、という展開はまあまあよかった。
ここでもジェームズ・マカヴォイはあっさり信じすぎだが(トーマス・クレッチマンだし、真相を告げるのがテレンス・スタンプであるにしても)、今さらもういいや。
モーガン・フリーマンが組織を私物化していたのは、「運命の織機」によって自分が暗殺のターゲットだと予言されたからだが、ハリウッドのお約束では「運命に逆らう」のは是とされるよな。主人公は「運命に従う」を是としたってことか? そうすっと、最後のモノローグと矛盾するんだが。たぶん、そこまで考えて作ってないんだろうな。
特殊効果は『ナイト・ウォッチ』シリーズの時よりはすっきりしているし、丁寧に作っているようでもある。洗練された、ということなのだろう。
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