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祖先の物語

『祖先の物語――ドーキンスの生命史』上下巻 リチャード・ドーキンス 垂水雄二・訳 小学館 2006(04) 

 なんで今まで読まなかったかと言うと、多作な科学者の本は後へ行くほど「はずれ」が多い、という経験則からなのであった。以前の著作との重複が多かったり、或いは仮説とも呼べない単なる思い付きをだらだら並べたりするだけだったり。
 しかし『ミカイールの階梯』執筆中に読んだ資料の中に、本書から引用がされていたので、これは読んだほうがいいかもしれん、と思いつつ、時間がなくてその時は見送ったのであった。

 で、読んでみましたらば、大変充実した内容でございました。幸いにして(とか言うな)『ミカイールの階梯』のネタに不都合なものはなかったけど。
 まあいろいろ余談雑談も多いんだけど、おもしろいものもある。例えば、2004年当時、ブレア首相は自国のメディアから「ブッシュのプードル」と呼ばれていたそうである。ブッシュと並んで歩いている時は、「カウボーイ気取りの」歩き方まで真似していたことが指摘されているとか。
 しかしこれだけならおもしろかったんだが、実際には何頁にもわたる「ミーム」ネタの一部として紹介されているのであった。ミームの話になると、途端に飲み屋で与太を飛ばす親父と化すな、ドーキンスは。

 以下、少々気持ち悪い話なので御注意。

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 北米に、「ホシハナモグラ」という動物がいる。ユーラシアの普通のモグラの仲間で、普通のモグラと同じようにシャベル状の手を持ち、地中生活をするんだが、少々(いや非常に)特殊な鼻を持っている。普通のモグラと同じ尖った鼻面の先の小さな二つの鼻孔の周囲に、イソギンチャク状の触手が11本ずつ、計22本ついているのである。「ホシハナ」という名は、その形状に由来する。

 上巻355頁に、ホシハナモグラを真正面から捉えた写真が掲載されている。最初にそれを見た時、私はそれがなんなのか理解できず、本文を読み、再び写真を見て、「鼻孔の周りに生えた触手」であることを認識した瞬間、「いっっっぎゃあああああああっ!!!」と絶叫しそうになった。叫びはせんかったが、震え上がって目を背けた。
 ううううううう、きもい、きもい、きもい。ほんとにこんな生物が存在するのか。「鼻行類」とかと一緒じゃないのか。怖いよ怖いよ。
「触手」の名のとおり、触覚が非常に発達している(あらゆる哺乳類のうちで最も)のだそうである。

「怖いもの見たさ」の人は、本書を読むか、ぐぐって画像を探すかしてください。責任は取りません。

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