ターミネーター4
冒頭、いきなりヘレナ・ボナム・カーターが登場したので驚いていると、彼女は死刑囚マーカス・ライト(サム・ワーシントン)に献体を依頼している。承諾書にサインし、マーカス・ライトが処刑されたのは2003年だったが、次の場面は2018年、クリスチャン・ベール演じるジョン・コナーがスカイネットの実験施設を襲撃している。
襲撃は失敗し、実験体として捕獲され閉じ込められていた人間たちが別の場所に連れ去られ、ジョン・コナーも撤退し、無人になった(作動するロボットもいなくなった)施設から、15年前に死んだはずのマーカス・ライトが忽然と現れる。
どうやら「なかったこと」にされたらしい前作は未見。まだ「英雄」ではなく、抵抗軍の小支部のリーダーに過ぎないジョン・コナーとまだ少年のカイル・リース(アントン・イェルチン)が出会う話。
前半は、蘇ったマーカス・ライトがカイル・リースと出会い、カイル・リースがスカイネットに連れ去られるまで、後半はマーカス・ライトがジョン・コナーと出会い、二人でカイル・リースを助けることになる。
というわけで、出ずっぱりなのはマーカス・ライト、物語の軸となるのはカイル・リースであり、ジョン・コナーの影が薄い。ジョン・コナー抜きでも話は成立するよな。
しかし、仮にジョン・コナー抜きだったら、相当薄っぺらい話になってしまうであろう。というわけで、クリスチャン・ベールはサム・ワーシントンとアントン・イェルチンの引き立て役としては巧く機能している。明らかにベール本人と監督の意図からは外れているが。
なんなんだろうな、クリスチャン・ベールのこの「巧いんだけど、埋没してる」感は。華がないとか、オーラがないとか、そういうんともまた違うんだよな。『太陽の帝国』の時は誇張抜きで神童だったのに。
ほかの俳優はぱっとしない。ブライス・ダラス・ハワードは雰囲気だけ。口のきけない役の黒人の女の子(日本人の血も引いているそうだ)は可愛い。
現在たいへん困ったことになっているカリフォルニア州知事(鑑賞時はまだその問題はニュースになっていなかった。お蔭で客席で笑わずに済んだ)のCGはよくできていた。「2」ではなく「1」の時の彼の顔を再現したこだわりには賞賛を送りたい。ジョン・コナーの顔の傷の由来もね。
が、そういった細部への目配りは、そこまでだ。
この作品に限ったことじゃないが、ああいう荒廃した世界で、生産体制とかどうなってるんだろう。文明崩壊から10年は経ってるのに、ヘリだの攻撃機だの潜水艦だのが残ってるってのも無茶な話だが(一部はスカイネットが作ったものを奪ったのかもしれないが、それにしたっていろいろ無理がありすぎる)、消耗品とか、特に食糧とかどうしてんだ。
狩りが食糧確保の手段の一つにはなってるようだが(カイル・リースは「3日前のコヨーテ」を食べていた)、あんな環境では充分な個体数がいるとも思えないし、そもそも飢餓が発生しているように見えない(人間の栄養状態が全般によすぎる)。
いや、別に腹が膨らむほど痩せこけてボロを着た連中が竹槍でスカイネットに立ち向かうようなのんを見たいというんじゃない。そういうのんを作らずに済むように、生産体制がどうなってるとか、せめてもう少し設定に頭を使ってくれ、というだけの話だよ。
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