管理者たち
基本設定の一つ。21~22世紀に世界を支配した巨大組織「遺伝子管理局」の頂点に立つ一握りの選良、と伝えられる。
2244年の時点(『ラ・イストリア』)で、彼らが本当に存在したかどうかはすでに検証不可能となっている。22世紀以前のデータを大量に有する者(「グロッタ」の住人たち)によれば、遺伝子管理局はピラミッド型組織ではなく、したがってその頂点に立つごく少数の支配者、なとというものの実在は極めて疑わしい。
2239年、「管理者たち」は災厄の原因としてキルケー・ウイルスのデータ提示、および人類絶滅を防ぐための「封じ込めプログラム」始動の宣言を行った。封じ込めプログラムはその翌日から実際に始動し、人類はこれを停止させようとして管理者たちを血眼で捜したが、彼らは痕跡一つ残さず、姿を消していた。
管理者たちは存在しなかったとする立場からすれば、封じ込めプログラムを始動させたのは遺伝子管理局の上部組織のいずれかで、「管理者たち」の名は騙られたもの、ということになる。
しかし封じ込めプログラムを実行し、十二の知性機械のアクセスコードとともに姿を消した者たちが、「管理者たち」の名で呼ばれる少数(数人~せいぜい十数人)の選良にせよ、上層部の一組織(これも多くても100人は超えまい)にせよ、その者たちもアクセスコードも、ついに発見されなかった。
『ラ・イストリア』の「グロッタ」の住人(『グアルディア』にも登場する「生体端末」を開発・製作した)、そして『ミカイールの階梯』のミカイリー一族などは、大災厄初期(22世紀末~23世紀前半)に「人類文明の遺産を守り保管する」使命を管理者たちから与えられた、と伝える。
大災厄の以前も以後も、地球上および衛星軌道上のコンピュータはすべて、十二の地域それぞれの知性機械の支配下にあった。知性機械のアクセスコードが失われたことで、この上位ネットワークを利用できる者もいなくなったはずだった。
しかし「遺産の守護者」と称する者たちは、それぞれの地域のすべてのコンピュータ(知性機械は除く)を自由に操作することができた。このことから、彼らに「使命」を与えたのが、アクセスコードを持ち逃げした者たちであるのは明らかだ。
ただしそれでも、管理者たちが実在した証拠にはならないのである。
以下、ネタばれ注意。
ミカイリー一族の伝承では、「ハーフェズ(守護者/保管者)」は自らの体験を情報として「この世のどこか」にいる管理者たちに伝え、「メァラージュ(階梯)」は一度だけ知性機械ミカイールにアクセスし操作することができる、とされる。
この伝承は事実だった。すなわち、知性機械を支配下に置く者たち=管理者たちは実在し、かつハーフェズたちから伝達された情報を受け取り続けてきたのである。
ここから、新たな謎が生じる。管理者たちの目的は何か。なぜ2339年、人類を見捨てて姿を消したのか。数世紀以上にわたって地上の情報を収集して、何をしようとしているのか(他の地域にもハーフェズと同じ役目を持った者たちが配置されていると考えられる。ラテンアメリカでは、生体端末がおそらくそれに該当)。彼らは数世紀以上にわたって生き続けているのか。或いは、今は眠りに就いていて、いつの日にか復活するというのか。
シリーズが続いていけば、この謎もいずれ解き明かされるであろう。
関連記事: 「遺伝子管理局」 「大災厄」 「封じ込めプログラム」 「知性機械」
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