« パブリック・エネミーズ | トップページ | 参考文献録 »

参考文献録

『愛蔵版 アルケミスト』 パウロ・コエーリョ 山川紘矢/山川亜希子・訳 角川書店 2001(1988)
the alchemist
 邦訳自体は1994年に地湧社から出たもの。英訳からの重訳。
 ポルトガル語原題は訳者後書きによると「エル・アルケミスタ」ということだが、どうやらo alquimistaが正しいらしい。ポルトガル語は知らんがoは「エル」とは読まんわな。スペイン語だとel alquimistaになるが、どっちみち発音は「エル・アルキミスタ」だ。
 あと、「ヴェドウィン」て表記は何?(ベドウィンならぬ架空の民族だとか言うんじゃあるまい)

 後書きでは「『星の王子さま』に並び称される」とか紹介されてるし、どうやらある方面では自己啓発本として読まれてるらしい。「星の王子さま」も「自己啓発本」も、鼻で笑わずにはいられない習い性だが、まあ本書で語られる「教訓」は押し付けがましくなく、また宗教や異文化の取り扱いも適切でよろしいんじゃありませんか?

 舞台はスペイン~北アフリカ。スペインはイスラム文化の影響が色濃い地として描かれる。時代設定は前近代かと思ったら、ライフルや「クロームメッキのピストル」が登場する。意図的に時代をぼかしているようだが、そういう、話を幻想的・お伽話的にするのに都合のよい舞台としての「なんちゃって前近代」(或いは「なんちゃって中世/古代」)は嫌いだ。
 自分に都合のいい設定にするために考証ははしょり、しかし中世や古代といった特定の時代の「ありもの」の雰囲気だけは都合よく拝借している根性が気に食わない。ファン・ヒューリックの「ディー判事シリーズ」は、敢えて近世以降の中国に於ける「なんちゃって唐代」という設定でそれなりに作り込んでるようだけどさ。
 同じ理由で「なんちゃって中東/ヨーロッパetc」も嫌い。本作は中盤の北アフリカの町までは、スペインと北アフリカの緊密に結び付いた空気、といったものがそれなりに出ているが、それも少年が砂漠に旅立つまでだ。

.

「タラス戦考」 前嶋信次 (『東西文化交流の諸相 民族・戦争』 誠文堂新光社 1982) (「中央アジア中世」)
 所収論文のうち参考にしたのはこの一本だけ。ほかは「古代アラビアの二民族――アードとサムード」「アラビア世界と暗殺」「ハッティーンの決戦――サラディンと十字軍」「元代戦象」「中世バグダードの文化とその滅亡」

 本書巻頭「はしがき」によると、本論文の発表は1958-59年、「私としては気力の充実していたころのもの」だそうで、実際、大変に力の入った内容である。タラス河畔の戦いに関する日本語の論考で、これ以上詳しいものは今のところないようだ。

|

« パブリック・エネミーズ | トップページ | 参考文献録 »

参考文献録」カテゴリの記事