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参考文献録

『シルクロード・キャラバン』 アンヌ・フィリップ 吉田花子/朝倉剛・訳 晶文社 1988(1955)
carabanes d’asie
 こういうタイトルだし、ネット上で見る内容紹介では、「1948年、中国からインドのカシミールまで、シルクロードを馬に乗って旅した」とかあるんで、西安からとまでは言わんでも、河西とかウルムチあたりからの全行程を騎馬で踏破したかと期待したのである。

 ……飛行機とバス使ってるやん。
 正確には、南京~ウルムチが飛行機、ウルムチ~カシュガルがバス、カシュガル~カシミールが馬。
 知りたかったのは、西域北道の騎馬行程である。

 フランス人の著者は、中華人民共和国成立前夜のどさくさで緊急帰国しなければならず、つまり物見遊山じゃないので、飛行機や自動車を使うのは構わないんだけどね。訳者による解説と、それに準じた出版社による内容紹介は、明らかに誇大広告だろ。ムキーッ。

 何か得るところはあるかもしれんと、ともかく通読するが、少なくとも次作に関連して得るところはなし。この「参考文献録」には、「資料として読んだ」文献は、資料として得るところがなくても記録していきます。

 まず目に付いたのは、近現代の新疆史にまったく言及されていないことである。冒頭の「新疆省について」では、この地の歴史についても概説されているが、「18世紀に入り、イスラム教徒の叛乱があったが、これも殲滅された。」で終わっている。
 つまり、19世紀~20世紀半ばの三つの大乱、ヤブク・ベクの叛乱、馬仲英の叛乱、東トルキスタン共和国が完全に無視されている。著者は新疆の住民とはほとんど接触していないし、まあ無視ではなく無知だろう(中華民国政府による隠蔽ってことはないと思う)。
 しかし、それにしたって東トルキスタン共和国軍が新疆省都ウルムチの間近まで迫ったのは、著者の新疆通過のほんの一年前である。1930年代の馬仲英の乱だって、スヴェン・ヘディンの著書(確か英語で書かれてたと思う)があるのにな。

 もう一つ目に付いたのは、「イスラム的狂信」に対する恐怖と嫌悪である。これは明らかに歴史に無知であることと結び付いている。

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