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参考文献録

『漂泊の王の伝説』 ラウラ・ガジェゴ・ガルシア 松下直弘・訳 偕成社 2008(2002)
la leyenda del rey errante
 邦題は原題の意味と同じ。著者はスペイン人。バルコ・デ・バポール児童文学賞受賞。

 舞台はイスラム以前のアラビア半島はキンダ王国、主人公はホジュル王の息子で詩才豊かなワリード王子。
 シバの女王を除けば、イスラム以前のアラビア半島が舞台の小説って珍しいよな。単にイスラム色を出したくないだけの、考証無視のいい加減なフィクションなら、それなりに数がありそうだが、本書はわりとしっかり考証されている。

 主人公ワリードのモデルは、実在のアラブ詩人イムルウ・ル・カイスである。『ジャーヒリーヤ詩の世界』(小笠原良治)によると、キンダ王国は5世紀の中頃に建国され、一時期はサーサーン朝ペルシアの後ろ盾を得て強勢を誇った。
イムルウ・ル・カイスは6世紀初めの王ホジュルの息子である。詩の才能に恵まれていたが、青年時代は放蕩がたたって父に勘当された。しかしまったく反省することなく、ならず者たちとつるんで半島各地を転々とした。一方、父のホジュルも暴虐な王だったらしく、被支配部族の叛乱によって殺害され、王国は滅亡した。
 亡国の王子となったイムルウ・ル・カイスは、父の復讐と王国の再興に残る人生を捧げ、結局どちらも果たせないまま530年代に歿した。

『漂泊の王の伝説』は、物語は創作だが、この史実を下敷きにしている(漂泊の「王」なのは、物語ではキンダ王国が滅ぼされたのは主人公の即位後だから)。当時の詩の形式など、時代背景も取り入れられている。
 物語自体についていうと、あからさまに説教臭い。子供なめんなよ。もちろん、時代考証がきちんとされてるから駄目なのではなく、創作部分が駄目。

『ジャーヒリーヤ詩の世界』感想

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