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参考文献録

『アルファフリー――イスラームの君主論と諸王朝史』 イブン・アッティクタカー 池田修/岡本久美子・訳 平凡社 2004 (「中央アジア中世」)
 全2巻。著者イブン・アッティクタカー(1262頃―?)が1302年に著した歴史書。「アッティクタカー」は流暢、饒舌に話すという意味で、綽名らしい。イル汗国のモウスル総督ファフルという人に献じられたので、「ファフリー(ファフルに捧げる書)」(「アル」は定冠詞)の名が付けられた。
「理想的な君主像」に関する雑多な逸話を集めた序と短めの第一章と、王や宰相の伝記、主要な事件などを概ね年代順に記した長い第二章から成る。第一章、第二章となっているが、巻末解説よると正確には序説と本論だそうで、この構成は『歴史序説』のイブン・ハルドゥーン(1332-1406)によって踏襲された。

 本論のほうは、正統カリフ時代からアッバース朝がモンゴルに滅ぼされる13世紀半ばまでを述べる。アッバース朝初期以前を扱った研究書とか読んでても、この本からの引用にお目に掛かった覚えがない。時代が下る文献なので致し方ないんだが。
 しかし、「何がどのように伝えられてきたか」というのは、史実そのものに劣らず重要である(フィクションのネタとしてだけじゃなくてね)。で、本書は大変ありがたいことに、アッバース朝初期以前のシーア派に関する記事がかなり多い。著者はシーア派の指導者(ナキーブ)だそうだが、シーア派関連の記事はやや同情的という程度で、充分に抑制が効いている。なので資料(「史料」ではなく)的価値は高い。

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