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参考文献録

『砂漠の宝――あるいはサイードの物語』 ジクリト・ホイク 酒寄進一・訳 福武書店 1990(1987)
saids geschichte oder der schatz in der wuste(ウムラウトは面倒なので省略しました)
 原題は「サイードの物語 あるいは砂漠の宝」。

 西アフリカのトゥアレグ族の少年アブリは初めて参加したキャラヴァンの旅で、語り部スレイマンと出会う。スレイマンは少年サイードの物語を始めるが、それは聞き手たちが出したアイディアを取り入れ、自由に成長していく。

 児童文学(中学生以上向け)だが、なかなか凝ったプロットでおもしろかった。「現実」のアブリの旅は西アフリカの砂漠に限定されるが、「物語」のサイードの旅は西アフリカから北アフリカを経由し、アラビア半島にまで至る。
 お伽話的要素も多分に含むが、現代の物語でもある。サイードが持つ「動物の言葉の解るガラス玉」といういかにもアラビアンナイト的なガジェットが、外国人と会話するのに役立ったりもする(それで欧米人観光客相手に商売したりするのである)。
 それぞれの土地の文化や風土などの違いも書き分けられ、特に、北アフリカとは明確に異なる西アフリカの文化や信仰の描写が興味深かった。

 しかしそれにもかかわらず、作者にとっては全部一絡げに「アラビアンナイトの世界」なってしまうらしい。枠物語という構造自体も、「アラビアンナイトの世界」だからこそだし。仏教という共通項だけでチベットから中国、朝鮮半島、日本まで一絡げにされてるようなもので、微妙。

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