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参考文献録

『レオ・アフリカヌスの生涯――地中海世界の偉大な旅人』 アミン・マアルーフ 服部伸六・訳 リブロポート 1989(1986)
leon l’africain(発音記号は面倒なので省略しました)
 レオ・アフリカヌスはグラナダ生まれのムスリムで、本名はハッサン・アル・ワッザン。1492年のグラナダ陥落で、まだ幼かった彼は家族とともにモロッコに移住する。長じてからは二度西アフリカに赴くが、シチリアの海賊に捕らえられ、法王レオ10世に仕えることになる。キリスト教に改宗し、ヨハネ・レオ・ド・メディチの名を賜った。彼の著作『アフリカ記』は、貴重なアフリカ資料としてその後4世紀にわたってヨーロッパで読まれ続けた。

 本書の存在はだいぶ前から知ってたんだが、これまで読まなかったのは、16世紀の人だし、イスラム世界でも西側の人だし、アフリカやヨーロッパと関わりが深いしで、資料としては直接参考にならないだろうと予想されたのと、同じ著者の『サマルカンド年代記』があんまおもんなかったからである(書かれたのは本書のほうが先)。

 幸い、『サマルカンド年代記』よりはずっとおもしろかった。15世紀末~16世紀前半は、ヨーロッパだけでなくイスラム圏にとっても激動の時代であり、しかも両者の関係がかつてなく密接になった時代でもある。
 レオ・アフリカヌス本人による自伝という体裁を取って、彼の人生に当時の国際的事件をこれでもかというほど絡ませている。それらの中には、少々やりすぎのエピソードもある。父親が、フェルディナンド王とイザベル王妃に会おうと懸命に画策中の「クリストバル・コロン」に偶々行き会うとか。が、全体として概ねよくできていると思う。

 ただし、彼の経歴の中でも最も重要であるはずのグラナダ陥落、アフリカ旅行、レオ10世の許での生活の三つのうち、詳細に書き込まれているのはグラナダ陥落だけで、後の二つはかなり駆け足である。グラナダ陥落も含めて、少年時代のエピソードが詳細なわりに、より波乱万丈だったはずの成人以降はあっさり片付けられてしまっている。
 しかし国境も宗教も易々と越えて活動する主人公は、まさしくルネサンス人であり、そのような人物をレバノン出身のフランスのジャーナリストが描いた本書(原著はフランス語)は、なかなか興味深い作品だった

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