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参考文献録

『〈悪しき〉文化について――ヨーロッパとその他者』 足立信彦 東京大学出版会 2006
 次作と直接には関連しないんだが、ちょっと自分の考えを整理しようと思って読んでみた。
「はじめに」にはこう書かれている。

 最近ドイツで起きた事件を例として挙げよう。
 ある町の路上で、若いトルコ人女性が、頭部に三発の銃弾を撃ち込まれて死んだ。手を下したのは彼女の弟である。姉が夫と別居し、ヨーロッパ的な生き方を求めたがゆえに、家族の「名誉を守るため」殺さねばならなかったのだ、と彼は言う。彼は、ドイツの法によって裁かれるだろう。しかし、その行為の背景にある「家父長的」な家族観に対して、われわれはどのように向き合うべきか。

 この問いこそ、私がよく考えてみたかったことである。が、残念ながら、本書はこの問いそのものを論じてはいない。ヨーロッパ的価値観からすると「悪しき」ものとされる異国の文化・風習について、ヨーロッパ人がどう向き合ってきたか(または向き合ってこなかったか)、ということが論じられており、上記の例やインドの「サティー」(寡婦の焼身)のような、現在進行形の「犠牲者を出す文化」について、我々はどう向き合うべきか、についてはまったく触れられていない。

 著者の専門なのか、ドイツの民族/国民観がどのように形成されたかに多くの紙幅を割いており、それに関連して現代ドイツの移民問題に一章を宛てていた。しかしそこでも、上記のトルコ人女性殺害事件については言及無し。
「サティー」については、80年代までの欧米識者の見解は取り上げてるんだが、インド人からの意見はあたかも存在しないかのごとくだ(当時ならすでに充分記録されていただろうに)。なんだかなあ。

 まあとりあえず参考文献を一点拾う。

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