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参考文献録

『隊商――キヤラバン』 ヴィルヘルム・ハウフ 高橋健二・訳 岩波書店 1977(1826)
Die karawane
 ハウフ(1802-1827)は戦前の日本ではグリム、アンデルセンと並べられる西洋童話作家だったそうで、この邦訳も初版は1940年である。短編集なのだが、最初の作品「コウノトリになったカリフの話」は、私も子供のころ「世界名作童話集」か何かで読んだことがある。確かタイトルは「こうのとりになった王さま」で、訳ももう少し低年齢向けだったと思う。もちろん作者の名前なんか完全に忘却していた。

 砂漠を行く隊商の人々が、夜の徒然を紛らわすために一人ずつ物語をしていくという構成で、ほかに「幽霊船の話」「切り取られた手の話」「ファトメの救い出し」「小さいムクの話」「偽りの王子のおとぎ話」。
 概ね千夜一夜風のメルヒェンだが、ギリシア人医師によって語られる「切り取られた手の話」はイタリアを舞台にしたまるっきりのゴシック・ホラーになっており、「幽霊船の話」もタイトルどおりシンドバッド風ゴシック・ホラーといったところで、ヨーロッパでは千夜一夜の受容とゴシック小説の隆盛が連動していたことを改めて確認させられる。いや、私はゴシックもホラーも好きじゃないってゆうかむしろ嫌いなんですが。

 で、「切り取られた手の話」だけは未解決で、最後に枠物語の外枠の隊商のメンバーたちの話として落ちが付けられてるんだけどいまいち。まあ作者が若いんだから仕方ないか。
「コウノトリになったカリフの話」が一番よくできている。プロットも簡潔なので、小学校低学年向けの童話集に入れるのにはちょうどいいんじゃないでしょうか。
 ほかの作品も(「切り取られた手の話」以外)、まあそれなりによくできているし、何より千夜一夜風の雰囲気を巧く取り込んでいるのが評価できる。しかし、中東風人名のストックがあんまりなかったのか(特に女性名)、ファトメとかムクラーとかゼリムとかそれっぽい名前のほかに、アハヴツィとかツォライデとかアドルツァイデとか微妙にドイツっぽい響きの名前が交じってるのは御愛嬌。

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