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参考文献録

『世界美術大全集 東洋編15 中央アジア』 田辺勝美/前田耕作・責任編集 小学館 1999 (「中央アジア中世」)
 扱っている地域は、いわゆる西トルキスタン(旧ソ連中央アジア)と東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)を中心に、アフガニスタン、パキスタン北東部(ガンダーラ)。出土地はロシアや中国(新疆以外)などでも、明らかに上記の地域で製作されたと判定された物も含む。
 時代は先史時代から8世紀末まで。以降の時代は第17巻の「イスラーム」で扱うそうである。
 第1章「先史時代と草原遊牧民の造形」、第2章「ギリシア美術の伝播と変容」、第3章「ササン朝美術の浸透と変貌」、第4章「西域南道と西域北道」、およびテーマ特集として「トロイアの木馬」、「毘沙門天像の変遷」など。

 次作には直接関係のない部分(先史時代~4、5世紀以前)も含めて全部目を通す。とにかく図版が豊富で鮮明(これは重要)なのが素晴らしい。
 各論や個々の図版の解説については、こうした「世界美術全集」の類の、マイナー地域の巻のものとしては相当に詳細だと思う。特に第3章のソグド美術については、これまでまとまった日本語文献が出ていないので大変ありがたい。
 第1章と第2章についても、スキタイやヘレニズムの美術を個々に扱った日本語文献は多いが、ギリシアやペルシアからの影響ばかりを強調するのではなく、中央アジア独自の美術として論じている。
 第4章については、まあこの地域を扱った日本語文献は山ほどあるからなあ。
 テーマ特集では、ガンダーラ出土の石板について論じた「トロイアの木馬」がおもしろかった。図像の解釈というのが人によってどれだけ変わり得るか、という点に於いて。

 広域の地図だけで、遺跡等の位置等を記した詳しいものはないのが瑕。

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