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参考文献録

「カサブランカ」「アジアの岸辺」 トマス・M・ディッシュ (『アジアの岸辺』 若島正・編 国書刊行会 2004)
Casablanca 1967, the asian shore 1970
「我々」の一人が異文化圏に入り、「我々」のルールが通用せずに「彼ら」のルールに翻弄され、挙句に「帰る」ことができなくなってしまう、という不安は普遍的なものであろうが、白人が非白人文化圏で、ということになると、オリエンタリズムが深く絡んでくる。異文化に対する普遍的な不安に、「白人の絶対的優位」が実は絶対的なものではない、という不安が加わるのである。

 この不安を主題として最初に小説を書いた白人作家が誰なのかは寡聞にして知らないが、とりあえず、このテーマで最も多く作品を書いているのはポール・ボウルズで間違いないだろう。
「カサブランカ」も「アジアの岸辺」もこの「ポール・ボウルズ式不安」を主題とした作品であるが、ボウルズの諸作品よりも一層鮮明にこのテーマを描き得ている。私はこの二作品のほうが好き。

 この中・短編集に収録されたほかの作品の中では、「本を読んだ男」(1994)と「第一回パフォーマンス芸術祭、於スローターロック戦場跡」(1997)が特におもしろかった。

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