« 参考文献録 | トップページ | 参考文献録 »

参考文献録

『鳩の頸飾り――愛と愛する人々に関する論攷』 イブン・ハズム 黒田壽郎・訳 岩波書店 1978 (「イスラム文化」)
 イブン・ハズムは994年、アンダルシアでスペイン・ウマイヤ朝の宰相の息子として生まれるが、1012年に政争によって父が死亡してからは苦難続きの人生を送る。
 1022年頃書かれたと思われる随筆『鳩の首飾り』はその後散逸し、19世紀中葉に再発見された。現存する写本はこの時発見された一点のみだが、書写生の奥書きによると、「詩の大半を割愛し、要点だけを際立たせるようにした」ものであり、要するに完全なものではない。
 テーマは副題どおり「愛」であり、背景となる文化水準の高さを窺わせる内容だが、ところどころ文脈がおかしかったりするのは、書写生が詩だけではなく本文からもあれこれ割愛してしまったせいかもしれない。

 古い翻訳だから仕方ないかもしれないが、なんの注釈もなしで「アッラーの使者」と出てきても、ムハンマドのことだと判る人はそういないよなあ。
 あと、「恋人」と「愛人」の使い分けは、恋人=恋する男、愛人=愛される女ということのようだ。原語(アラビア語)ではどう言うのかは判らないんだが、ルーミーの詩の英訳でもlover、mistressという語が、「恋する男、愛される女」という意味で使い分けられていたから、イスラム圏にはそういう概念があるんだろう(ルーミーはペルシア語だが)。しかし日本語では注釈が必要だよな。

|

« 参考文献録 | トップページ | 参考文献録 »

参考文献録」カテゴリの記事