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参考文献録

『アラブの歴史』 フィリップ・K・ヒッティ 岩永博・訳 講談社学術文庫 1983(1937/1970) (「イスラム文化」)
History of the arabs
 第十版の訳。上下巻。
 古い本だから読まなくていいや、とか思ってたんだが、初期イスラム時代についてのアラビア語・ペルシア語原典史料の多くが日本語訳も英語訳も出ておらず、そして現在まで出ている日本語文献のうち、本書が最も広範にアラビア語・ペルシア語原典に当たっているようなので、読んでみました。

 古代のアラビア半島から始まって、中世を中心に近現代まで。まあ読んだのは12世紀頃まで(下巻の四分の一まで)だが。
 私が知ってる範囲(7、8世紀)だけでも、現在の研究者の見解とは瑣末な部分が微妙に違ってたりもするんだが、あくまで「瑣末」「微妙」で収まる程度。訳者解説に、「アラブ世界の全域にわたり、政治、社会、文化の全領域をバランスよくカバーした、空前の綜合的アラブ史」であり、「以後も個人の著作でこれを凌ぐものは現れていない」とある。
「アラブ世界」とか「アラブ史」の定義は措いといて、個人の著作にもかかわらずこれだけ広い領域を詳細にかつ解りやすく説いているのは驚くべきことである。解りやすさの要因の一つは見解に一貫性があることだが、これは個人の著作だからこそである。

 とはいえ、一番知りたかったアッバース朝革命前後については、特に目新しい情報はなし。あと、索引がないのが不便。

 外来語をあまり使わないアラビア語で、なぜ「音楽」が「ムーシーカ」という明らかにヨーロッパ語起源の語なのか、ずっと不思議に思っていたんだが、本書で謎が解けた。9世紀頃にギリシア語の音楽理論書が翻訳された際に導入されたんだそうな。

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