« 参考文献録 | トップページ | 参考文献録INDEX(国内) »

美醜について

 テッド・チャンとは関係ありません。

 一部で誤解があるようだが、私は「綺麗な男」が好きではない。そもそも、世間で美しいと言われる男を見ても、どこが? と思うことが多いのだ。ああ確かに綺麗な顔してるね、と思うこともあるので、美的感覚がまるきりずれてるというわけでもないようだが、その場合でも、だから何? てなもんである。
 綺麗な女は好きである。例えば頭もしくは性格の悪い美女がいて、その中身によってこちらが害を被ったとしても、彼女の容姿の美しさへの称賛は変わらない(実際、今までにそういうことは複数回あった)。
 まあつまり、私にとって綺麗な女は鑑賞対象だが綺麗な男はそうではない、ということなのである。

 この嗜好は自作にも如実に表れていて、美女や美少女の容姿を描写するのは非常に楽しいが、いわゆる美形キャラの容姿を書き綴るのは楽しくもなんともない。
 だいたい、容姿の美しさというのは文化によって異なるものだし。全人類共通の美の条件といったら、骨格の左右対称性と髪や肌の色艶の良さくらいなもんであろう。これは配偶者の選択に関わる最も根源的な条件で、『グアルディア』と『ラ・イストリア』の端々でも述べているが、病気と飢餓が蔓延している世界では、この条件さえ満たしていれば、相当に美しいと見做されるのである。

 そういうわけで、『グアルディア』中、ある程度出番のあるキャラで、美少女はカルラのみ、美女はモニーク・マルタンのみである。モニークは美女といっても、気さくで親しみ易いイメージだしね(終盤で本性現すまでは)。アンヘルは「条件付き美女」。
 一方、美形キャラは……白人至上主義の屑野郎で相応の最期を遂げるポール・ロバーツしかおらんよ? しかも自己申告だし。客観的に見ても美形の部類には入るんだろうけど、金髪緑眼白皙のアングロサクソン系で、四半世紀前までの日本人が「外人男性」というと思い浮かべたに違いないタイプであろう。ちなみに私は性別に関わりなく金髪が嫌いである。12歳以下の美少女は例外。

 JDは美形というほどじゃないと思う。他人からの評価も「そこそこハンサム」程度だし。カルラだけは「すごく綺麗」と言っているが、それは欲目というものです。上述のとおり、顔や身体の均整が取れてて髪・肌・歯等の状態がいいだけで、それなりに美しいと見做される世界ですから。
 不老長生の一族であるホアキン、ラウル、クリストフォロたちも、遺伝子の自己修復能力が優れているので、上の条件を満たしているものと思われます。でも現代で言うところの美形にはならんと思う。ラウルの顔立ちについては「端整」と表現しているけど、端整だけど地味な顔ってのもあるしね。

 いや、それにしても美女や美少女について書くのは本当に楽しいのに、容姿がそこそこ以上の男について書くのは全然楽しくないです。ユベールみたいに容貌魁夷なかっこいい男とか、カルラの実の父親みたいに屑人間振りが外見にも現れてるような男を書くのは非常に楽しいんですが。
 とはいえ、冒頭で述べたとおり、私の美的感覚は世間と多少ずれているので、美形であることを作中ではっきり否定されていないキャラについては、美形だと想像して読むのは皆様の自由ですよ。

『グアルディア』の次にはアニメのノベライズを担当したわけだが、もしキラキラした美形ばっかりのアニメだったら間違いなく断っていましたね(いや、そういうアニメだったら、そもそも早川書房さんにノベライズの企画が行くことはなかったか?)。
 しかしキラキラこそしてはいないものの、コザキユースケ氏デザインによる容姿端麗な男性キャラクターは何名か登場するわけである。頑張って描写しようとしたんだけどね……「端麗」とか書くのでいっぱいいっぱいで……申し訳ありませんでした。

 そういうことがあったから、というわけでもないんだが、次の『ラ・イストリア』では美形を大放出してみました(つっても数人か)。シリーズ随一の人格破綻者クラウディオを「美青年のなれの果て」として描きたかったので、回想では超絶美形にしたわけです。クラウディオと彼の過去の仲間たちは全員、遺伝子改造された超絶美男美女なのですが、そういう「人工的で安っぽい美しさ」を書くのは、わりと楽しかったです。
 もちろん、その後のクラウディオの「なれの果て」振りのほうが、遥かに楽しかったわけですが。
 ヴィスコンティの『ヴェニスに死す』でいえば、タッジオ少年ではなく、あんな安っぽい美少年に永遠の美を見出して死んでいくダーク・ボガードの老醜(汗で流れ出す白髪染めと化粧、薄くなった後頭部)を取る。

 なお、生体甲冑の着用者となった後のフアニートは、アロンソによって「美しい」と表現されていますが、これは再三繰り返すように、作品世界に於いては栄養状態がよくて均整が取れているだけで……ということですよ。

『ミカイールの階梯』でも、美女美少女の描写はわりとしてるけど、美形はなあ……? わかりやすく美男なのは、脇役で「女を騙す係」のジャファルだが、美形というのとはちょっと違うだろうし。政治将校のセルゲイは、ユスフから「男振りがいい」と一回言われるだけだ。
レズヴァーンも、美しいとは書いたが、それは「一種異様な美」であって美形とは違うと思う。地顔は、美女美少女のマルヤム・フェレシュテ母娘とよく似ているというからには、整っているのは確かだけど(同じことはミルザにも言える)、開き直って女装を始める前は、覇気のない地味なにーちゃんだったわけだし。
 ともかく『ミカイール』では全体に、男性陣の容姿の描写は曖昧にしてあります。一番詳しく書いたのは、ずんぐりして目の細いおっさんであるユスフだったりして。あとは皆様の想像にお任せします、ということで。

|

« 参考文献録 | トップページ | 参考文献録INDEX(国内) »

HISTORIA」カテゴリの記事