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北国の帝王

 監督は、あの『何がジェーンに起こったか』(いや、未見なんだけど評判はかねがね……)のロバート・アルドリッチ。一応ネタばれ注意。

 大恐慌時代、失業者たちは職を求めてアメリカ全土をさ迷っていたが、彼らの中には列車の無賃乗車を移動手段とする者たちがいた。
 発見した無賃乗車犯は問答無用ででかい金槌で殴り殺す、悪魔のような車掌がアーネスト・ボーグナイン。ボーグナインを出し抜いて無賃乗車を成功させることを、手段ではなく目的としている失業者がリー・マーヴィン。マーヴィンとボーグナインの両方を出し抜いて「無賃乗車王」の座を奪取せんとする若造がキース・キャラダイン。

 考えてみれば阿呆な話で、たかだか無賃乗車で文字どおりのデスマッチである。失業者にとっては切実な移動手段で、鉄道会社員にとっては塵も積もれば会社の損失になるから阻止せねばならない、とかそういう話ではなく、無賃乗車という形式で男たちがガチでバトルを繰り広げる。
 無賃乗車ごときでそんな阿呆な、と思うが、要するに無賃乗車は「男同士の戦い」で賭けられるもののメタファーである。どっちにしろ、男ってアホだな、という話。
 そういう普遍的に阿呆な、ほとんど神話的ですらあるガチ勝負をガチで演じるアーネスト・ボーグナインとリー・マーヴィンは、もはやほとんど人間離れしている。現代ではもうこんな役者はいないよな。2人とも、台詞はごく少ない。後半、リー・マーヴィンがキース・キャラダインに長々と訓戒を垂れるが、ほとんど無意味なたわ言であり、台詞とは切り離された表情の身体の動きのほうが遥かに見ごたえがある。アーネスト・ボーグナインは顔だけで泣く子を黙らせられそうだ。

 キース・キャラダインは空威張りで身の程知らずの若造を好演。特に終盤では非常にイラッとさせられる存在になっており、結末では溜飲が下がる(アルドリッチ監督は、60年代70年代の若者文化が嫌いだったらしい)。

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