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スターダスト

 映画版が好きなんだが、原作者がニール・ゲイマンだということを(というか、そもそも原作があるということを)つい最近まで知らなかったのであった。いや、その情報には一度ならず接しているはずなんだが、なぜだかその都度、記憶の底に沈んでしまってたようだ。
 そういうわけで、同名の原作(角川文庫)を読む。以下、原作と比較しながら映画版の思い出し鑑賞記。

 んー、映画を最初に観て気に入ったがゆえの感想だというのは承知の上で敢えて言うが、映画のほうがおもしろかったなあ。もう何年も経ってるから忘れちゃってる部分もあるけど、プロットに関しては、映画のほうが枝葉が刈り込まれててシンプルだった(すなわち原作は枝葉が多い)印象だ。
 キャラクターについては逆に、映画のほうが作り込まれている。全体にどのキャラクターも、原作を土台に役者の個性が巧く活かされて、より魅力的になってる感じ。主人公、ロバート・デニーロ演じる空中帆船の船長(原作では印象が薄い)、謀略好きだが間抜けな王子たち(ジェイソン・フレミングとかルパート・エヴェレットとか)、主人公の父親(の青年時代を演じたベン・バーンズは、この後のカスピアン王子よりずっといい)らにも言えることだが、特にヒロイン(クレア・デーンズ)、悪い魔女(ミシェル・ファイファー)、悪い国王(ピーター・オトゥール)の三人については役者の個性によるところが非常に大きい。

 世間知らずで(何しろ、落ちてきた星の精である)子供っぽいけど、意外にがさつというか図太いヒロインと、魔法で一時的に若返ってるけど本当は超高齢の魔女のどちらも、一時ほどの人気がなくなっていたデーンズとファイファーの二人だからこそ、このように演じられた役だ。
 若返りの魔法がどんどん解けていって、皺やシミが出るどころか髪までなくなっていく過程を嬉々として演じるミシェル・ファイファーも凄いが、普通なら原作どおりの「女の子」を演じるには薹が立ちすぎているにもかかわらず、敢えて子供っぽく演じることで、年齢を超越した星の精を表現している(しかも可愛い)クレア・デーンズには感心した。

 しかし何より素晴らしいのは、邪悪な国王ピーター・オトゥールである。登場場面は十分にも満たないし、臨終の床に横たわってるだけなんだが、圧倒的な存在感である。あんなふうに邪悪かつ愛らしく微笑むことのできる役者が、彼のほかにいるであろうか、いやきっといない。実に素晴しい笑顔なんだ。あの年齢だからこその笑顔であって、オトゥール本人でも若い時分には無理だね。

 もう何年か経ってもう少し記憶が薄れたら、あの笑顔のためだけでも再鑑賞したいものである。

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