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インフォーマント!

 マット・デイモン演じる主人公の視点にほぼ終始して、時系列どおりにエピソードを連ねた、ソダーバーグにしては単純明快な作り。しかし主人公が妙な具合によじれた人物なので、作品自体も妙な具合によじれているのであった。以下、ネタばれ注意。

「歪んでる」とか「ねじ曲がってる」とかとは違うのである。「歪んでる」だと心に闇を抱えてるみたいだし、「ねじ曲がってる」というと単にひねくれ方の度合いが大きいというだけのようだが、そういうんではなくて、「妙な具合によじれている」としか言いようがない。
 最初は、真っ直ぐな奴に見えるのである。食品会社のエリート社員が、業界内で価格協定が結ばれている、という情報をFBIにもたらす。なぜ会社を裏切る行動を? と問うエージェントたちに、インフォーマント(情報提供者)となった社員は、正義感からだ、と答える。

 前半、主人公は高潔なヒーローというよりは、ヒーロー願望に突き動かされているだけのお人好しのように見える。ただ、しばしば入るモノローグが、ところどころ脈絡がなくなるので、「どうも変だ」という印象を受ける。
 そしていよいよ捜査が大詰めになってきた頃、主人公は妻に向かって述べる。「これで社長や副社長が逮捕され、会社は僕のものだ」
 つまりこれが彼の狙いで、内部告発は失業を覚悟した上ではなかったのである。間抜けな奴だな、と観ているほうは思う。FBIの捜査官たちも、彼の目論見までは知らないものの、会社に残れる気満々なのはわかるので、気の毒でたまらない、といった目で見ている。

 ところが後半、強制捜査が行われると、主人公自身が次々とボロを出すのである。不正行為、経歴詐称、さらには価格協定そのものも彼が仕組んだ可能性まで出てくる。そして、これらの暴露に対する本人の反応は、まったく支離滅裂である。
 あっけらかんとした人格破綻者を、マット・デイモンは実に巧みに演じている。というか、これまで観たマット・デイモンの役の中では、最もよく似合っている。この人、本当は頭がいいんだけど、とてもそうは見えないんだよね。にもかかわらず、この「頭悪そうに見える容姿」を活かした役は、少なくとも私がこれまで観た中では本作が初めてである。

 うん、やっぱり口を半開きにしてぼけーっとしてるとか、なんにも考えてなさそうな笑顔とか、嘘がばれて稚拙な言い訳をしてるとか、すごく似合ってる。これだけめちゃくちゃなことをした人物(実話だそうである)を演じて後味の悪さを感じさせないのは、貴重な資質だ。

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