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インベージョン

『ボディ・スナッチャー』の何度目かのリメイク。いや、前作はどれも未見なんだが(原作『盗まれた町』も)。宇宙からやってきた寄生体に身体と精神を乗っ取られる、というジャンルの古典で、かつては社会(アメリカの)に紛れ込んだ共産圏のスパイのメタファーだったりしたのが、この2007年版ではもっとストレートに「感染」のメタファーになっている。いや、ストレートすぎて暗喩じゃないか。

 しかし寄生体(ウイルス状なのか胞子状なのかはっきりしない)に操られる、という設定だったら、現実の寄生体が宿主の行動を操る例が幾つもあるんだから、作中で言及したほうが説得力が出ただろうにな。
 説得力といえば、カプグラ症候群というものがあって、これは事故などで脳に損傷を受けることによって、家族や友人など馴染み深い相手(場合によっては馴染み深い物品も)を、新皮質のレベルでは以前どおり認識できるのに、情動レベルでは認識できなくなってしまう障害だ。そうすると、患者本人にとってその相手は、姿や声はそのままなのに、もはや「馴染み深さ」を感じられないということになる。
 このような矛盾した心的状態に対し、人間は無意識で「説明」を捻り出す。この障害の場合は、「親しい人々が、外見はそっくりの別人に入れ替わっている」あるいは「何ものかに乗っ取られている」。
二コール・キッドマン演じるヒロインは精神科医なんだから、患者が「夫の精神が別人に入れ替わっている。わたしにはわかる」とか言い出した時は、真っ先にカプグラを疑うべきだよな。

 それ以前に、世界中の国々の首脳部が寄生体に乗っ取られるかと思えば、「ノーベル賞受賞の科学者たち」を中心とする対策本部がきちんと機能してたりして、どうも設定をきちんと詰めているとは思えないんだよね。とにかく、いろいろ粗が目につきました。
本作とソダーバーグの『コンテイジョン』は、ともに「感染パニックもの」という括りに入れることができるんだが、前者がSFに分類されるのに後者がそうではないのは、ひとえに前者の病原体の来歴が宇宙だからである。
 しかし本作(および他のSFに分類されたりされなかったりする感染パニックもの映画すべて)に比較して、科学考証から設定の作り込みまで遥かにきっちりしている『コンテイジョン』のほうが、遥かにきっちりSFなのである。SFは「サイエンス・フィクション」の略であって「スペース・ファンタジー」じゃないのですよ(数年前、非SFファンである妹2人にそう言ったら、2人とも「えっ、そうなの? スペース・ファンタジーだと思ってた」と本気で驚きやがりましたよ)。

 その他の感想としては、二コール・キッドマンは最近、整形しすぎで顔の皮膚がつっぱってきてるけど、この頃はまだ綺麗だなー、とか、ダニエル・クレイグの髪がまだふさふさで妙に笑える、とか。キッドマンの息子役の子が可愛かった。

『コンテイジョン』感想

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