« 月に囚われた男 | トップページ | ジャンゴ 繋がれざる者 »

塀の中のジュリアス・シーザー

 共に80歳を越えるタヴィアーニ兄弟の最新作。イタリアのレビッビア刑務所で毎年行われている演劇研修。いずれも重罪犯の囚人たちが、プロの演出家の指導で半年にわたって稽古をし、公演には一般客も招かれる。
 演出家が集まった囚人たちを前に、今年の演目はシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』に決まった、と告げる。オーディションで役者が選出され、稽古が始まる――

 というドキュメンタリーの形式で話は進んでいく。この演劇研修のことを知ったタヴィアーニ兄弟が、演出家に掛け合って撮影に協力してもらったのである。しかし実際には、演目を『ジュリアス・シーザー』に決めたのはタヴィアーニ兄弟だし、事実上の主役であるブルータス役を務める囚人は、元・囚人である。服役中にこの演劇研修で経験を積み、出所後にプロの俳優となって、すでに幾つもの映画に出演している。
 それにもかかわらず、元・囚人のプロ俳優は現役囚人ということになってるし、すべての「登場人物」は映画撮影のことなどおくびにも出さないしで、実際にはかなりコントロールされたセミ・ドキュメンタリーとでも呼ぶべき作品である。

 しかし撮影はすべて本物の刑務所内で行われているし、「俳優」たちはすべて本物の囚人(および元囚人)で、しかもその多くが元マフィアの一員だ。その彼らが暗殺が主題の『ジュリアス・シーザー』を演じるのである。
 不吉な予感に囚われ、暗殺の現場となる議場へ赴くのを躊躇うシーザーを、暗殺犯の一人が口八丁で丸む場面の稽古で、シーザー役が演技を中断して、「その役はおまえにぴったりだ。面と向かってはおべっかを使うくせに、陰で俺の悪口を言いふらしてるのを知ってるぞ」と言い出す――というような展開が、どこまでコントロールされているのかはともかく、謀略、暗殺、人心掌握、形勢逆転、戦闘、といった各場面に、囚人たちが自らの経験(マフィアの権力闘争など)を重ね合わせているのは間違いない。妙なリアリティと迫力が醸し出されているのである。

|

« 月に囚われた男 | トップページ | ジャンゴ 繋がれざる者 »

鑑賞記2013」カテゴリの記事