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フィクサー

 トニー・ギルロイ監督作品。プロデューサーとしてシドニー・ポラックやスティーヴン・ソダーバーグが名を連ねている。

 深夜、中国人が仕切る怪しげな賭場でカードをしているジョージ・クルーニーが緊急の仕事で呼び出されるところから、物語は始まる。彼は大手の法律事務所に勤務するが、弁護士ではなく、顧客の不始末の尻拭いを専門とするフィクサーである。かなり投げ遣りに一仕事終え、明け方の山道を飛ばしていた彼が、丘の上に佇む三頭の馬に気づき、車を停める。夢を見ているかのような表情でゆっくりと馬たちに近づいていく彼の背後で、いきなり車が爆発する。
 そして話は四日前に戻る。以下、一応ネタバレ注意。

 ジョージ・クルーニーの同僚弁護士を演じるのがトム・ウィルキンソン。農薬で地下水を汚染された農家の人々による集団訴訟で被告の農薬製造会社を六年も担当しているが、良心の呵責に加えて原告の一人である若い女性に恋してしまったため、奇行に走って職務放棄する。彼の代わりを務められる者はほかにおらず、事務所はクルーニーにウィルキンソンを説得して仕事に復帰させるよう命じる。
 一方、被告の大企業は、農薬による水質汚染の危険性を承知で販売していたことを隠蔽していたのだが、ウィルキンソンがその証拠を入手していることを知る。

 ……とまあ、ここまで来れば後の展開は予想がつき、事実、まったく予想どおりに展開する。私はサスペンスには大して興味はないから、ほかに観るべき点があればそれでいいんだが、サスペンスが好きな人にとってはどうなんだろうな。
 本作の観るべき点は役者の演技である。ジョージ・クルーニーは何をやってもジョージ・クルーニーにしか見えないのであまり好きな役者ではないのだが、本作では体重を少々増やしていたためもあってか、「何をやっても」感があまりなくてよかった。脇を固めるトム・ウィルキンソン、ティルダ・スウィントン(悪の大企業の重役)、シドニー・ポラック(法律事務所所長)も巧み。

 ただなあ、話も大詰めに差し掛かる頃、クルーニーはウィルキンソンが集めていた、汚染隠蔽の証拠を目にする。で、「不正は事実だったのか」と動揺するのである。えー? ってことはつまり、不正は行われてないと信じてたの? 
「裏の仕事専門」という触れ込み(あくどいことに、すっかりうんざりしているとはいえ)の割には、ずいぶんと純真である。トム・ウィルキンソンを説得しようとするのに、「今さら正義漢ぶるな」とか言うから、てっきり不正が行われてるのは承知して(少なくとも察して)いて、その上で、どうせ巨大企業相手には負けるからやめておけ、というような意味で言ってるんだと思ってたんだが。

 あと、「悪の女幹部」ティルダ・スウィントン。会社と自分の権益を守るためなら汚い仕事も辞さない一方、企業の顔として取材を受ける際には入念にリハーサルし(自宅でひとりで)、株主たちの前で事情を説明する日には、前日からスーツ(だけでなくストッキングまで)をきちんと用意しておく、という水面下の努力も怠らない(もちろんワークアウトも欠かさない)。そしてストレスで押しつぶされそうなのを、必死で持ちこたえている。
 そういう彼女が「悪」として懲らされる展開は、観客の「ほらね、やっぱりこういうガツガツしてる女は失敗するんだ」というミソジニー+シャーデンフロイデな喜びを制作側が見越してる感じで、なーんかやだね。

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