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パピヨン

 フランス領ギアナ(未だに独立していない)はかつて、ドレフュス大尉も送られたことがあるという、ある意味由緒ある流刑地であった。たいへん過酷な環境で、囚人の多くは刑期を勤め上げる前に死ぬし、生き延びた者も母国には帰れず、労働者としてギアナに留まらなければならなかったという、フランス現代史の暗部である。そのギアナに1930年代(ドレフュスが釈放されてから、それほど年月は経っていない)、無実の罪で送られた男の回想録に基づく。

 映画は1973年の米仏合作(英語)。脱獄ものだからということなのか、胸に刺青があることからパピヨンと呼ばれるこの囚人を演じるのはスティーブ・マックィーン。彼の囚人仲間の贋金作りドニがダスティン・ホフマン。
 
 150分もあるから、公開時にはいろいろカットされてたのではあるまいか。そのせいか、なんか構成のバランスが悪い。脱獄するまでが長すぎるんだな。いや、囚人たちの生活というか生態が丁寧に描写されてて、非常におもしろくはあったんだが。ホフマンはいつもに増して作り込んでるし、マックイーンもそれほど作り込んだキャラクターではないものの、独房のシーンでは、痩せこけ、半ば狂気に犯されながらも、蛾やゴキブリまで食べて生き延びる、鬼気迫る執念を熱演、いや怪演している。
 それに対して、脱獄後が駆け足過ぎる。加えて、パピヨンを救助した先住民の村が、ゴーギャン的に理想化されすぎてて(無垢であり、かつ性的に解放されている)鼻白んでしまったのだが、現在はそういう臆面のなさが改善されたかというと、そうでもないか。

 というわけで、脱獄まではおもしろいだけに残念な映画。

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