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ピザ・ボーイ

 ベトナム帰りの退役軍人(少佐)が宝くじを買い込んで1000万ドル当て、以後は贅沢三昧の生活を送るのだが、その息子ドウェインはまったくの碌でなしで、時給10ドルで家事手伝い(父親のプールの掃除など)をするほかは、父親のホームシアターで『13日の金曜日』を観たりして毎日だらだらと過ごしている。
そんな彼にも不安はあり、それは父親がこのまま贅沢を続けて、死ぬまでに金を使い果たしてしまうのではないか、ということなのだが、ストリッパーにそそのかされて、父親がこれ以上金を使う前に殺してしまうことにする。

 しかし遺産を手に入れたら日焼けサロン(裏のサービス付き)を始めて大儲けするつもりなので、自ら手を汚すわけにはいかないと、これもストリッパーが紹介してくれた殺し屋を雇うことにする。しかし殺し屋を雇うには10万ドルが必要である。その10万ドルを捻出するには銀行強盗が手っ取り早いのだが、上記と同じ理由で自ら手を汚すわけにはいかないので、誰が他人にやらせることにする。
 ところで、ドウェインにはいつもつるんでいる悪友というより子分のトラヴィスがいる。どうやらドウェインと同じく無職で、ドウェインの父親の下で時給10ドルのアルバイトをして生活しているらしいのだが、妙に器用で、ネットで得た知識で起爆装置付き爆弾を作ることができる。
 ドウェインはこのトラヴィスに爆弾ベストを作らせ、偶々TVでCMをやっていたピザ宅配店でピザを注文する。そしてやってきたピザボーイを拉致して爆弾ベストを着せ、銀行強盗をしないと爆弾で吹っ飛ばすと脅すのであった。

 なんか、こうやって書き出してみると、RPGみたいだな。魔王(あるいはそれに類するボスキャラ)を倒すには伝説の剣が必要で、伝説の剣を入手するには賢者から助言をもらう必要があって、そのためにはさらに別の条件が……と。どうでもいいが、碌でなしのドウェインは『ロード・オブ・ザ・クエスト』で碌でなしの王子を演じてたジョン・マクブラウドだ。
ちなみに主人公はドウェインではなく、不運なピザボーイのニックである。

 以下、ネタバレ注意。
 終盤、ドウェインの父親はとばっちりで殺し屋に撃たれる。撃たれたのは腹なので、とりあえずその場面では生きていたが、その後どうなったか不明のままである。ドウェインも爆弾で吹っ飛ばされるという自業自得の最期を迎えるのだが、とりあえず生死は不明である。
 で、エンドクレジットの後に、おまけ映像が付いていて、ドウェインがトラヴィス(大やけどを負ったが、一応最後まで生きていた)と共に健在な姿で、日焼けサロン「メイジャー(少佐)」の経営者として登場するのである。そして表と裏両方のサービスを紹介していく。

 ああ、本編中盤でドウェインがトラヴィス相手に語っていた夢(妄想)の映像化なんだな、と思って観ていると、最後の最後に日焼けサロン「メイジャー(少佐)」の前でドウェインとトラヴィス、そして車椅子に乗った父親(少佐)、さらにはドウェインに父親殺害計画を吹き込んだストリッパーが整列し、「家族経営が自慢です」というドウェインの言葉で締めくくられる。
 つまり、腹を撃たれて半身不随になったものの日常生活を送れるまでに回復した父親が、ドウェインと和解した上に出資までしてくれて、ストリッパーも殺し屋(トラヴィスの火炎放射器でバーベキューにされて生死不明)のことはきれいに忘れてドウェインと結婚して(「家族経営」と言うからにはそうなんだろう)、すべてめでたしめでたしのハッピーエンドというわけなのであった。んなアホな。

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