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デス・レース2000年

 B級映画のB級っぽさというのは結構好きなんだが、それ以前に私はホラーが大嫌いである。そしてB級映画にはホラーが多い。というわけで、必然的にB級映画をあまり観たことがないのであった。
 何がB級かという定義は結構曖昧であるが、これはロジャー・コーマン制作なので、紛うかたなきB級映画だ。

 近未来(西暦2000年)、独裁国家と化したアメリカでは、年に一度最大の国家行事として「アメリカ横断レース」が行われている。五人のレーサーが各自自由なコースを取って北米大陸を横断するのだが、その途上で何人民間人を轢き殺すかで得点を競う。

少ない予算への制作スタッフの対応は二種類あって、一つは工夫で乗り切ろうとする、もう一つはそういう努力を最初から放棄している。本作は前者で、安っぽさは如何ともし難いものの、画面に滲み出る、いや溢れ出る一生懸命さは微笑ましい。
 雰囲気のあるロケ地(特典インタビューによると、公民館とか廃ビルだそうな)を探し出す努力に加え、撮影や編集の技術、それに脚本はかなりちゃんとしたものだ(これより金も時間も掛けてるのに稚拙な作品はいくらでもある)。まあもっと昔の作品ならともかく、1976年なんだから、レースの全行程を生中継する程度の発想はしてもらいたいが。

 残虐な娯楽を提供する独裁国家とそれを熱狂的に支持する大衆、というのはベトナム戦争に対する風刺で、たぶん90年代くらいには古臭いとされていたと思うが、21世紀初頭現在では、この風刺は再び有効になってきている。ラストでTVリポーターが、みんな残虐な見世物を望んでいるんだと絶叫するのは94年の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』と同じだが、本作のほうがシンプルで効果的だ。

 主役はデヴィッド・キャラダイン、そのライヴァルがブレイク前のシルヴェスター・スタローン。デヴィッド・キャラダインは、年取ってからのほうが遥かにいい男だなあ。というか、『デス・レース』の時はもう40だが、驚くほど魅力に欠ける。
 つまり、今30とか40で全然つまらん男でも、20年後30年後にはいい男になっているという可能性は充分あるわけか。いろいろと希望の持てる話だ。

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