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マイレージ、マイライフ

 気の弱い上司に代わって社員にリストラを告げる役を請け負う、という会社があって、ジョージ・クルーニー演じる主人公はそのベテラン社員。年に300日以上出張し、マイレージを貯めることを人生最大の目標とし、女は行きずりに引っ掛け、自宅ではまったく無為に過ごすという生活に完全に満足しており、「成功者」として講演を依頼され、他人に訓戒を垂れたりもする。
 そんなある日、心理学部卒の新人が、わざわざ対象の許へ出向くのは時間と金の無駄だから、TV電話で済ませればいい、と提案し、社長もその気になる。ジョージ・クルーニーはその案に反感を覚えるが、直接対面しないのは誠意を欠く上に不測の事態に対応できないから、というのと、マイレージが貯まらなくなるから、というのと、どちらの理由が上なのか、本人も今一つはっきりしていないようである。
 ともかく反対意見を表明した結果、件の生意気な小娘に現場を見せることを社長に命じられる。
 
 予想されるとおり、彼女は理論の上でしか「人間を知らない」頭でっかちな秀才であり、現場の生々しさに直面させられ、大いに動揺する。リストラ告知代行というやくざな稼業であっても精一杯の誠意をもって臨むべきであり、TV電話越しでは最後のラインであるその誠意さえも欠くことになる、ということなのだが、ただし主人公は誠意をもって述べる慰めや励ましの言葉を、自分ではこれっぽっちも信じてはいない。

 以下、ネタバレ注意。

 要するに、主人公の生き方は間違っており、家庭を持つことこそ人として正しいのだ、というあまりにも陳腐な話なのだが(しかも、その家庭が壊れて修復不能になったらどうするんだという問題を完全に無視している)、暑苦しさを抑えたジョージ・クルーニーの演技と脚本や演出の巧さで、作品自体が陳腐になることは免れている。

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