ミッション
86年の映画で、日本公開が直後だったのか、しばらく後だったのかは知らんが、いずれにせよ私は当時中学生か。映画鑑賞などという結構な趣味とは無縁の非文化的生活を送っていたが(地元にロードショーをやっている映画館が一軒もない上に、小遣いがゼロという境遇に置かれていたのである)、先住民に扮した俳優ではなく「本物の先住民」を使っているということで結構話題になっていたのを、うっすら憶えている。
で、その取り上げ方というのが、川口浩探検隊と同列の扱いだったような記憶がうっすらとある。違ったかもしれんが。
1750年代、南米のスペイン領とポルトガル領の境界線上に位置していたイグアスの滝。冒頭すぐにポスターにもなった(しかし実は重要なシーンでは全然ない)「磔刑滝落とし」があり、続いてイエズス会宣教師のジェレミー・アイアンズとリーアム・ニーソンが登場する。
80年代の映画はあまり観ていないので、これまで観た二人の出演作の中では一番古い。まずジェレミー・アイアンズが若いのに驚き、次いでリーアム・ニーソンが全然変わらんのにさらに驚く。
えーっ、これ30年近く前の映画でしょ? 全然変わらんて、どういうことだ。今が若く見えるんじゃなくて、昔から老け顔だったんだな。すでに思春期には、この顔が完成していたに違いない。
しかも当時すでに40近かったジェレミー・アイアンズが、純粋な信仰心を持った宣教師として、過酷な生活にやつれているものの無垢で純真な、幼いとさえ言える表情を見せる(まあ、それも演技なんだろうけど)のに対し、4歳年下のリーアム・ニーソンは、年齢以上に落ち着き払って、まったく若さが感じられん(これは演技じゃなかろう)。
先住民を狩って売り飛ばす奴隷商人から、改心して宣教師となるのがロバート・デニーロ。この頃がピークかな。90年代初めには、すでにくどくて平板な演技になっちゃってたから。
以下、ネタバレ注意。
史実に基づく。先住民の人権などほとんど無視されていた時代に、イエズス会の宣教師たちは改宗させた先住民たちが自活する村を作り、白人から守っていた。しかしそこへ、スペインとポルトガル、カトリック教会、さらにはイエズス会の四者の権益が絡み、ついに村は抹殺されることになる。
確かに宣教師たちは人道的だったが、それはほかの白人たちに比べてであり、少なくとも先住民文化の破壊という点では、まったく劣らない。18世紀当時にそういう視点が欠けていたのは仕方ないが、20世紀も終わりに近づいた時代に制作された映画にもその視点がまったく見られない上に、コメンタリーを聞いた限りでは、今なお監督はそんなことは思いも寄らないようである。
ともあれ映像は美しいし、終盤の戦闘場面はなかなか迫力がある。一番興味深かった場面は、先住民や黒人の文化が混淆してクレオール化したカーニヴァル(音楽はエンニオ・モリコーネだ)。
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