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『SFマガジン』2014年8月号

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 700号 (先月号) 記念企画のオールタイム・ベストSFのアンケートへの回答が、ほかの方々の回答と共に、今月号に掲載されています。
「オールタイム・ベスト」ということで、「ずっと好き」「影響を受けたくらい好き」という条件で選んだのですが、その内容について、この場を借りて釈明もとい説明させていただきたく……

国内長編(順不同)

・手塚治虫 〈火の鳥〉シリーズ
・萩尾望都 『銀の三角』
・佐藤史生 『夢見る惑星』
・宮崎駿 『風の谷のナウシカ』
・古橋秀之 『ブラックロッド』

 ほとんどが漫画ですみません。短編こそSF(小説)の真髄、と確信するようになったのは二十代も終わりに近付いた頃で、それ以前は長編が好きだったのですが、思い返してみると強く印象に残っている作品、影響を受けた作品(小説)は短篇ばかりです。これで自分は短編が書けないんだから、まったく碌でもないですね。
〈火の鳥〉シリーズは、影響を受けたというより、ほとんどトラウマで、このシリーズと5歳の時に出会っていなかったら、こんな作風の小説家にはなっていなかったと自信をもって断言できる。小説家にすらなっていなかった可能性も高い。きっと、もっと社会に適応した人間になっていたはずです。
『ブラックロッド』と出会ったのは小説を書き始めた二十代半ばで、この「詰め込めるだけ詰め込む」スタイルの影響は、如実に『グアルディア』に現れていますね。
 ほか三作との出会いは十代で。当時すごく好きで、現在に至るまではっきり影響を受けている長編漫画はほかに竹宮恵子の『地球へ…』がありますが、今となっては魅力的な女性キャラがいない上に男性キャラ同士の愛憎関係が少々、いやかなり小っ恥ずかしいので除外いたしました。

国内短篇

1 大原まり子 「一人で歩いていった猫」
2 大原まり子 「リヴィング・インサイド・ユア・ラヴ」
3 大原まり子 「親殺し」(以上三作とも早川書房『一人で歩いていった猫』所収)
4 神林長平 「甘やかな月の錆」(早川書房『言葉使い師』所収)
5 亀和田武 「夢見るポケット・トランジスタ」(早川書房『まだ地上的な天使』所収)

 大原氏の三作は「こういう短篇SFを書きたい」代表例。
 神林氏の作品は、「完璧な涙」と「抱いて熱く」のほうが先に出会っただけに印象は強いのですが、「甘やかな」の美しく病んだ感じが現在の好みには合っているのでこれにいたしました。
 亀和田氏の作品は、「“悪”と闘うよりも偽りの幸福に安住することを選ぶ主人公」というのがリアルで衝撃的でした。

次点 沙村広明「シズルキネマ」(『シスタージェネレーター』)。
「萌え」の不自然さ、気持ち悪さを端的に表現しつつ、最後にはきっちり感動させるという超絶技巧。傑作。漫画だから除外、というわけではなく、影響を受けたというわけでもないので(大いに見習いたいところではありますが、まあ割と最近の作品だし)。

海外長編(順不同)

・スティーヴン・キング 『ファイア・スターター』
・マータ・ランドル 『星のフロンティア』
・オルダス・ハクスリー 『すばらしい新世界』
・チャイナ・ミエヴィル 『言語都市』
・フィリップ・K・ディック 『スキャナー・ダークリー』

 金髪碧眼というものにこれっぽっちも関心がない私をして「美少女(上限12、3歳)は例外」とさせたのが『ファイア・スターター』。いや、そういう理由でここに挙げたわけじゃありませんが。
『星のフロンティア』は中学の時、初読。高校で再読して以来、読んでいないので、もしかしたら今読むと印象が違うかもしれないが、とにかく新井苑子のほのぼのとした表紙イラストが激しくそぐわない、全体にかなりシビアな話で、ところどころはまったく情け容赦がない。その情け容赦のなさでここに。
『すばらしい新世界』:「みんなが幸福なディストピア」という捻れが素晴らしい。
 もう二作は「ずっと好き」「影響を受けたくらい好き」の条件に当てはまるものがなかったので、ここ数年で読んだものの中から。たぶん数年後にはまた違っているでしょう。

海外短篇

1 フレッド・セイバーヘーゲン 「バースデイ」(『スペースマン』)
2 ジェローム・ビクスビイ 「きょうも上天気」(『きょうも上天気』)
3 ティプトリーJr 「接続された女」(『20世紀SF〈4〉』)
4 オクテイヴィア・バトラー 「血をわけた子供」(『80年代SF傑作選』)
5 ティプトリーJr 「おお、わが姉妹よ、光満つるその顔よ!」(『星ぼしの荒野から』) 

 この五作に共通するのは「情け容赦のなさ」で、私がSFに最も求めるものの一つ。ただしティプトリーJrに限っては情け容赦のなさというより「底意地の悪さ」であり、特に「おお、(以下略)」の悪意はただ事ではない。

 国内および海外の作家については、「ずっと好き」「影響を受けたくらい好き」という条件だと5人に満たず、作品ならともかく作家を、この条件に合わないのに「数合わせ」で入れるのも失礼な気がするので無回答といたしました。申し訳ありません。
 いっそ1人に絞れたら、その人に得点全部、という回答もできたのですが(いや、それで集計してもらえるのかは判りませんが)。

 また、この号にはSFセミナーの参加企画についてレポートしていただきました。
 昼の部のパネルで喋ったことの拡大版を、〈HISTORIA〉シリーズ設定として当ブログに掲載しています。
「絶対平和 Ⅱ」  「連作〈The Show Must Go On〉」

 それから、レポートで言及されている「岡和田晃氏への回答」はこちら。念のために補足しますと、あくまで岡和田氏の評論(およびSFセミナーでの発言)に触発されたわたしの意見であって、氏の考えを否定するものではありませんよ。

 

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