ヤング≒アダルト
シャーリーズ・セロンが、「学園の女王」だった過去にしがみ付く痛い女を演じる。ネタバレ注意。
何一つ問題は解決せずに終わるのだが、後味は悪くない。ヒロインの価値観が徹底して歪んでいて、いっそ清々しいほどだからだ。
高校時代の元彼からメール(「子供が生まれました」)が届いた段階では、彼女は「田舎で平凡で退屈な人生」を送る人々を軽蔑している。だがしばらくして、どうも現在の自分の生活は虚しいのではないかと感じ、「輝いていた頃の自分」を取り戻すべく、故郷に向かう。具体的には、元彼とよりを戻して(彼を離婚させて)結婚しようという魂胆である。
この試みが失敗に終わり、彼女は己が不幸であると認識する。しかし己を省みて何が原因なのか気づき、成長するという結末にはならない。
かと言って、元彼とその妻の幸せな家庭を「絶対善」とする説教臭い結末でもない。プライドがズタボロになったヒロインは、彼女に憧れていたオタクの元同級生に慰められる。しかし、「実は身近にあったささやかな幸せ」を手に入れる、という結末にもならない。一夜開けると、気の迷いだったと言わんばかりに、眠っている彼を置いて無言で立ち去る。
結局彼女は、オタクの元同級生の妹に、「あなたは特別な人。この町の馬鹿で退屈な人たちとは比べ物にならない」と言われて立ち直る。つまり、振り出しに戻る。
ただ、シャーリーズ・セロン以外の女優が演じてたら、多かれ少なかれもっとコミカルになってたんじゃないかと。いや、下手だという意味ではなくて、例えば『ブラック・スワン』以前のナタリー・ポートマンみたいに熱演しすぎて空回り、というのでもないし、レニー・ゼルウィガーみたいに「こんな嫌な女の役もできるのよ、ほんとのわたしは違うんだけどね」臭が芬々というのでもない。
笑えるところは笑えるんだけど(間の取り方は決して悪くない)、全体としてコメディと呼ぶには何かが足りない。あるいは何かが過剰。うーん、なんだろう。「いつまでも女王様気取りの痛い女」役にハマりすぎってことかもしれない。
もっとも、コメディ色が強かったら、その分リアリティが薄まっただろうから、一長一短てとこだな。
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