ドラキュラZERO
ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』は、あくまでワラキアの君主ヴラド3世をモデルにしているだけで、ヴラド本人が吸血鬼だったとしているわけではない。それを、ヴラドが吸血鬼だった、という話にしたのが本作。
『ヘルシング』でも確か、ドラキュラ=ヴラドという設定だったと思うが、まあドラキュラ映画としてはオリジナルな発想であろう。
串刺し公ヴラドはルーマニアでは英雄ということになっていて、残虐行為も「小国の君主の已むに已まれぬ必要悪」ということになってるそうだが、本作もこの路線で押し通している。織田信長の人気を考えれば、日本人にこのヴラド像を批判する資格はないわな。
吸血鬼に興味がないのになぜ観に行ったかと言えば、①ルーク・エヴァンス好きの妹に付き合いで、②大幅にフィクションとはいえ、ヴラド・ツェペシュが主人公の映画に興味があったから。
結果としては、それなりに史実を素材として巧く使っていて、例えばヴラドが少年時代にオスマントルコの人質だったという史実とイェニチェリ制度を組み合わせて、ヴラドはイェニチェリだったので戦闘能力が高いんだという設定にしてある。ついでに、衣装やセットも、このレベルの嘘歴史アクション映画にしては重厚で美しい。
吸血シーンも、「ヴラドが吸血鬼になるまでの話」なので、ほとんどないし、吸血鬼の描写もおおかたは「醜悪な怪物」なのもよかった。何が嫌いって、お耽美な吸血鬼ほど嫌いなものはないんだよ。
というわけで、吸血鬼になったルーク・エヴァンスにも興味はないのだが、解放された「マスター・ヴァンパイア」(解放後はいったい何になったんだとか、ところどころ設定が曖昧だなあ)のチャールズ・ダンスが、ダンディな老紳士でなかなかかっこいい。
| 固定リンク