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ビッグ・アイズ

 この夫婦のエピソードも「ビッグ・アイズ」のイラストも全然知らなかったんだが、これを観た数日後、偶々読んだロン・グーラートの『ゴーストなんかこわくない』。オカルト探偵が主人公の連作なんだが、その第1話に「巨大な目玉の子供の絵」を「合作する夫婦」が登場というか言及されていた。別の話には、「なぜか大人気の素人くさい絵が、実はゴースト・ペインターによって描かれていた」というエピソードも。
 邦訳が出たのは2006年だけど、書かれたのは60年代初め~末。
 本物の「ビッグ・アイズ」の作者マーガレット・キーンが真相を告白したのは70年で、それまでは夫のほうが作者だということを誰も疑わなかったようだけど、ひょっとしたら短編の名手グーラートは何か察していたんだろうか、とか思ったり。

 とんでもない嘘つき夫を演じたのがクリストフ・ヴァルツ。違う役者だったら、映画そのものも違う出来になっていただろう。『イングロリアス・バスターズ』と『ジャンゴ』の喋りまくる役で頭角を現した役者だが、本作でも喋りまくり。まさに独演会。
 映画で描かれているウォルター・キーンという男はとにかく嫌な奴で、妻に対する仕打ちもひどいものなので、陰鬱な話になってしまいかねないのが、不思議とそうなっていない。ヴァルツの演技に負うところが大きい。

 妻のマーガレットがウォルターの言いなりになってしまったのは、おとなしくて人が好い性格だからというのに尽きるのだろう。演じるのはエイミー・アダムズで、『ザ・マスター』の「一見従順な妻だが、実は夫を支配し操ろうとする野心家」とはまったく違ったキャラクターを見せている。ヴァルツに比べてどうしても地味だが、彼女の演技もたいへん巧い。すごくつらい思いをしているのが伝わるけれど、陰鬱な雰囲気にはなっていない。

 ファンタジーを封印した実話の映画化は『エド・ウッド』以来だけど、「事実は小説より奇なり」を地で行くのは、いかにもティム・バートンらしい。冒頭、道路わきに曲がりくねった巨木が立っているカットがあるが、曲がりくねった木はバートン作品によく出てくるから、あれは「バートン印」ということでいいのかな。

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