ワールド・ウォーZ
ホラーは嫌いだが、SF寄りのホラーなら許容範囲である。そういうわけで小説『ワールド・ウォーZ』は、よくできたアポカリプスものであった。一方、映画のほうは「ゾンビが出てくるだけのアクション大作」という評判であるが、数日前に観た『ラブ・アクチュアリー』が甘口すぎたんで、口直し的な意味で観てみた次第である。
以下、ネタバレ注意。
……評判どおりだったねえ。てゆうか、『アナと雪の女王』以上に原作が影も形もないよ。「ゾンビ=疫病」設定の映画なんていくらでもあるんだから、オリジナルでいいじゃん。『ワールド・ウォーZ』を原作としてクレジットする意味がどこにあるんだ(そこまで知名度が高いわけじゃあるまい)。
「発生源は中国で、人民政府が隠蔽したために感染が拡大した」という設定がカットされたのは中国市場を考慮すれば当然のこととして、せめて群像劇にできなかったのか。主演は作品選びが巧いブラッド・ピットだし、監督もマーク・フォースターだというのに、まさに「凡庸な大作」という形容が相応しい。
原作はバイオハザードもの(文字どおりの意味でのバイオハザード)としてもよくできていたが、映画は『コンテイジョン』の足許にも及ばん。
アクションないしスリラーとしてもねえ、あまりに捻りのない展開に、途中から「どうせ主人公は助かるんだろ」と達観してしまい、そしてその予想は最後まで裏切られないのであった(その点でも『コンテイジョン』より劣る)。
ちなみにホラーが嫌いなんで、これまでに観たことのあるゾンビ映画は、『バイオハザード』が何本かと、『プラネット・テラー』と『コンヴェント』だけだが、ゾンビ・アクション映画としては『バイオハザード』一作目には遥かに及ばないし、『プラネット・テラー』や『コンヴェント』のように笑いどころもない。いや、『コンヴェント』の笑いは明らかに意図したものではないんだが。
このブログは原則として、褒めるところのない映画の感想は上げません。時々例外もありますが、今回は例外ではなく、褒めどころはあります。映画と比べることで原作のおもしろさが引き立つ、という点が。
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