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『伊藤計劃トリビュート』と『SFマガジン』10月号 『伊藤計劃トリビュート』

 いよいよ明日21日金曜日に刊行です。
 真っ赤な地にシンプルなデザインが目を惹く書影はネットで確認済みでしたが、実物は700頁超という分厚さもあって、文庫とは思えない重厚感です。

 作家は逸早く自著の新刊を手にできるわけですが(いや、一度だけ発売日の翌日に届いたことがありましたが。書店に並んでいるのに作者の手許にはないという)、これが自作だけ収録された本の場合、確かに装丁の実物を目にできる喜びはありますが、中身については誤字脱字チェック以外、することはありません。実際に見つけてしまうと落ち込むし。
 でも今回はアンソロジー、しかも8分の1なので、ほぼ一読者として新刊を手にする喜びがありましたよ。
 皆さんも明日、是非お手に取ってみてください。

51ynvu3qq2l 『伊藤計劃トリビュート』

 私の収録作「にんげんのくに」は、前にお伝えしたとおり、HISTORIAシリーズに属します。
 本来は『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』の連作(連作名は〈The Show Must Go On〉)の一篇として、「はじまりと終わりの世界樹」の次に脱稿した作品でした。
 HISTORIAシリーズは、各作品の繋がりが緩く、単独で読めることを大原則としていますが、〈The Show Must Go On〉は連作なので、それなりにまとまりがあります。
 この連作のテーマは、もともとは“暴力”でした。「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」と「はじまりと終わりの世界樹」が“現代の暴力”、「The Show Must Go On!」以下三篇が“その延長線上にある暴力”、そして「にんげんのくに」が“原始的な暴力”です。
 “原始的な暴力”とは、その言葉から連想されるような“無秩序”、“本能的”、あるいは“動物的”な暴力では決してなく、非常にシステマティックで“文化的”で“人間的”、つまり根本的なところで“現代の暴力”となんら変わりはない……という構成だったんですが。

 しかし「にんげんのくに」は例によって長くなりすぎた上に、「ミーチャ」をはじめとする他の収録作が〈絶対平和〉の構築から崩壊(前夜)まで、というまとまりがあるのに対し、これだけいきなり〈絶対平和〉崩壊から数百年後。作品としてもカラーが違いすぎるし、HISTORIAシリーズを初めて読まれる方々には不親切かな、というわけで、とりあえず外しましょう、ということになったのでした。

 その後、『伊藤計劃トリビュート』に入れたいというお話があって、ああ、言われてみれば確かに「伊藤計劃的」だな、と。計劃さんにお目に掛かったのは一度だけですが、その死には私なりに思うところもあったので、自分にできることはしたいという気持ちから、参加させていただくことにしたのでした。
 この『トリビュート』のために書かれた作品として読んでも、違和感はないと思います。  

 HISTORIAシリーズとしては、時間軸で最新(『グアルディア』より後)になりますので、これまでシリーズを読んできてくださった読者の方々の中には、その点に興味を持ってくださる方もおられるのではないかと。例によって物語的には直接の繋がりはありませんが。

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 さて、去る7月9日、『トリビュート』執筆者で行う座談会に出席してまいりました。世代別ということで、伊藤計劃さんと同世代組(1970年代前半生まれ)は私、藤井太洋さん、長谷敏司さんの三人です。
 それぞれの収録作品について話しましょう、ということで、これに先立ってお二方の収録作品(藤井さん「公正的戦闘規範」、長谷さん「怠惰の大罪」)を読ませていただいたのでした。両作品とも凄くてかっこいい、かっこよくてすごいのに、私は読んだ小説について喋るのが苦手なので碌なことが言えず、そこで藤井さんと長谷さんが二人して「にんげんのくに」を是非アニメ化してほしいとか冗談を言わはるので一層困惑したり(いや、無理ですヴィジュアル的に……全裸だから)しましたが、楽しい時間を過ごさせていただきました。

 しかし主題はやはり伊藤計劃さんについてで、6年も経っているにもかかわらず、あるいはたった6年しか経っていないから、塞がっていた傷を開くのに似た体験で、なかなかきついものがありました。私よりも長谷さんのほうが、作品(『メタルギアソリッド』ノベライズなど)を通じて伊藤計劃さんと深く向き合っていた分、あそこまで心情を吐露するのは つらかったのではないかと思います。

 座談会の内容は、25日発売の『SFマガジン』10月号に収録されます。あの場で語れることはすべて語り、同じ話を繰り返す気力も少なくとも当分はありませんので、「にんげんのくに」著者後記(この座談会より後に書きました)では、伊藤計劃さんのことには一言も触れることができなかったのでした。

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