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PAN

『ピーターパン』の前日譚ということになんだが、ピーターは「大人になるのが嫌で家出した子供」ではなく、捨て子だということになっている。
 この時点で、原作のシニカルさは雲散している。まあ原作のピーターは、相当やな奴だからね。その欠点は一言で言えば「幼児性」だが、本物の子供の幼児性というより、「大人になりたくない大人」(おそらく作者であるバリー自身)の幼児性だからなあ。
 
 とはいえ原作の毒気は抜かれているわけではなく、海賊黒ひげに集約されている。ネバーランドの侵略者で、現実世界の孤児を買い取っては採掘場で死ぬまで働かせるのである。
 演じるのはヒュー・ジャックマン。ハゲ+ヅラ+白塗りという、事前に知っていなければ誰だか気づけそうもないメイクで、すごく楽しそうである。登場シーンには、元孤児の鉱夫たちがニルヴァーナを合唱する(本人も歌う)。
 
 ピーターを利用して採掘場から脱走する若い鉱夫が、フック船長の前身。『トロイ』のパトロクロスか。その後の出演作も幾つか観てるはずだが憶えてないな。今回は結構キャラが立っている(以下ネタバレ注意)。
 しかしそれだけにこの後、黒ひげが消えてすっかり毒気が抜かれたネバーランドで、ピーターやタイガー・リリーと互いに命を狙い合う敵になるのは、ちょっと展開に無理があるんじゃなかろうか。

 タイガー・リリーはルーニー・マラー。そう言えば、原作でも彼女の部族が北米先住民だとは一言も言ってないんだよな。というわけで、映画の中での彼らは欧米人が考えるところの世界中の「エキゾチック」を寄せ集めた上でカーニヴァル仕立てにしたようなデザインと民族構成である。
 痩せて小柄な彼女がそういうデザインの衣装を着けて「闘うプリンセス」を演じると、なんか『もののけ姫』みたいだ。

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映画感想INDEX あ~な行

 原作小説の感想のついでに映画版にも触れている記事もあります。

 定冠詞「ザ」が付いたタイトルの作品は、とりあえず定冠詞なしで分類します(例:『ザ・ロード』だったら「ら行」に)。

は~わ行

あ行

「アーティスト」 「アイアンクラッド」 「アイアン・スカイ」 

「アイアン・フィスト」 
「アイアンマン」 「アイアンマン2」 「愛についてのキンゼイ・レポート」 

「アウトロー」(クリント・イーストウッド) 「アウトロー」(トム・クルーズ) 
「悪の法則」 「アクロス・ザ・ユニバース」 「アザー・ガイズ」 

「アジャストメント」 「アタック・ザ・ブロック」 「アデル」 
「アドルフの画集」 「アナと雪の女王」 「アパルーサの決闘」 

「アポカリプト」 「アメリカン・ギャングスター」 「アメリカン・サイコ」 
「アメリカン・スナイパー」 「荒馬と女」 

「アラトリステ」 「ALI」 
「アリス・イン・ワンダーランド」 「アルゴ」 

「アルゼンチンタンゴ」 「アンダーグラウンド」 
「アンブレイカブル」 「アンドレイ・ルブリョフ」 

「イースタン・プロミス」 「怒りの葡萄」 
「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」 「イミテーション・ゲーム」 

「イングロリアス・バスターズ」 「インソムニア」

「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」 「インフォーマント!」 
「インクレディブル・ハルク」 「インベージョン」 

「インランド・エンパイア」 

「ヴィレッジ」 「ヴィンセントが教えてくれたこと」 「ウエスタン」 
「ウォンテッド」 「失われた週末」 

「英国王のスピーチ」 「英雄の証明」 
「エージェント・ゾーハン」 「エル・マリアッチ」(シリーズ他2作) 

「大いなる幻影」 「王妃の紋章」 「オーケストラ!」 
「オール・ザット・ジャズ」 「オズ」 「鬼が来た」 

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」 

か行

「カウボーイ&エイリアン」 「崖の上のポニョ」 「カジノロワイヤル」  
「風とライオン」 「カティンの森」 「彼女が消えた浜辺」 

「カポーティ」 「借りぐらしのアリエッティ」 
「ガルシアの首」(その他ペキンパー作品) 「カンダハール」 

「危険なメソッド」 「北国の帝王」 「キックアス」 
「君のためなら千回でも」 「キャピタリズム」 

「ギャラクシー・クエスト」 「宮廷画家ゴヤは見た」 「96時間」 
「キル・ビル」 「銀河ヒッチハイクガイド」 「キングダム・オブ・ヘヴン」

「グアンタナモ」 「ククーシュカ」 「グッド・シェパード」 
「グッドナイト&グッドラック」 「グッバイ・レーニン!」 

「グランド・ホテル」 「グラン・トリノ」 「グリーン・ホーネット」 「黒猫・白猫」 

「ケイン号の反乱」 

「攻殻機動隊2.0」 「ゴースト・ライター」 「告発のとき」 
「ココシリ」 「GODZIRA」 

「ゴスフォード・パーク」 「ゴーン・ガール」 「コンテイジョン」 

さ行

「13ウォーリアーズ」(主にマイケル・クライトンの原作とその元ネタについて) 
「最高の人生の見つけ方」 「サイモン・バーチ」 

「サボテン・ブラザーズ」 「サロゲート」 
「三銃士」 「3時10分、決断のとき」 「サンタ・サングレ」 

「J・エドガー」 「ジェシー・ジェームズの暗殺」 
「地獄の黙示録」 「シティ・オブ・メン」 「ジャーヘッド」 

「シャーロック・ホームズ」 「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」 
「ジャスティス」 「ジャンゴ 繋がれざる者」 

「終着駅」 「シューテム・アップ」 
「12人の怒れる男」 「情婦」 

「女王陛下の戦士」 「ジョン・ウィック」 「ジョン・カーター」 
「シンドラーのリスト」 「新宿インシデント」 「シンデレラマン」 

「スウィーニー・トッド」 「スカイフォール」 
「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」 「スキャナー・ダークリー」  

「スターダスト」 「スパイダーマン3」 「スピード・レーサー」 
「スラムドッグ$ミリオネア」 「300」 「300 帝国の進撃」 

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」 「ゼロ・グラビティ」 「戦火の馬」 
「戦争と平和」 「ぜんぶ、フィデルのせい」 

「続・夕陽のガンマン」 「ゾディアック」 「その男、ヴァン・ダム」 

た行

「ダーク・シャドウ」 「ダークナイト」 
「ターミネーター4」 「ターミネーター5」 

「第九地区」 「第十七捕虜収容所」 
「太陽の帝国」 

「チェンジリング」 「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」 「チョコレート・ファイター」

「ツォツィ」 「ツーリスト」 「月に囚われた男」 

「デイウォッチ」 「デイズ・オブ・グローリー」 「ディナー・ラッシュ」 
「テキサスの五人の仲間」 「デス・プルーフinグラインドハウス」 

「デス・レース2000年」 「鉄コン筋クリート」 「テッド」 

「トゥルー・グリッド」 「突撃」 「トム・ヤム・クン!」 
「ドラキュラZERO」

「ドラゴン・タトゥーの女」 「ドラムライン」 
「トランスフォーマー」 「トランスフォーマー ロストエイジ」 

「トランセンデンス」 「トロピック・サンダー」 

な行

「ナイト&デイ」 「ナイトウォッチ」 「慰めの報酬」 
「ナルニア国物語第2章」 「ナルニア国物語第3章」 

「ニュートン・ボーイズ」 「ノーカントリー」

は~わ行

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あ~な行

は行

「バードマン」 「ハーフェズ ペルシャの詩」 「ハーモニー」 
「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールズ・エンド」 

「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉」 「ハウルの動く城」 

「パットン大戦車軍団」 「バッファロー・ソルジャーズ」 
「パトリオット」 「バトル・オブ・フロントライン」 花の影」

「パパは出張中!」 「パピヨン」 「ハプニング」  
「パブリック・エネミーズ」 
「バベル」 「パラダイス・ナウ」 

「ハリウッド的殺人事件」 「ハリウッドランド」 
「バルジ大作戦」 「バロン」 「PAN」 

「パンズ・ラビリンス」 「バーン・アフター・リーディング」 「ハングオーバー」 
「ハンティング・パーティ」 

「ビール・フェスタ」 「ピザボーイ」 
「ビッグ・アイズ」 「ヒックとドラゴン」 

「ヒトラーの贋札」 「ヒューゴの不思議な発明」 

「ザ・ファイター」 「ファイナル・ファンタジーⅦ」 
「フィッシャーキング」 「フィクサー」 

「ブーリン家の姉妹」 「ブエノスアイレス」 「副王家の一族」 
「ブッシュ」 「フューリー」 

「プラダを着た悪魔」 「ブラックスワン」 
「ブラックブック」 「ブラッド・ダイヤモンド」

「プラネット・テラーinグラインドハウス」  「フリーダ」 
「プレステージ」 「ブロークン・フラワーズ」 「ブンミおじさんの森」 

「ヘア・スプレー」 「塀の中のジュリアス・シーザー」 「ペルセポリス」 
「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」 「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 

「ボス その男シヴァージ」 「ホット・ファズ」 「ホテル・ルワンダ」 
「ホビット」 「ホビット2」 「ホビット3」 「ボラット」 

ま行

「迷子の警察音楽隊」 「マイティ・ソー」 
「マイ・フェア・レディ」 「マイ・レージ、マイ・ライフ」 

「ザ・マスター」 「マチェーテ」 
「マッド・マックス 怒りのデスロード」 「魔笛」 

「摩天楼を夢見て」 「マネー・ボール」 
「マリー・アントワネット」 「マルホランド・ドライブ」 「マレーナ」 

「ミックマック」 「ミッション」 
「ミッション・クレオパトラ」 「未来少年コナン」(TV版)

「ムーンライズ・キングダム」 「メタルヘッド」  
「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」 「メンフィス・ベル」 

「もうひとりのシェイクスピア」 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」 
「モンゴル」 「モンスター上司」 「モスキート・コースト」 

や行

「ヤギと男と男と壁と」 「ザ・ヤクザ」 「野蛮なやつら」 
「闇の列車、光の旅」 「ヤング≒アダルト」  

「夕陽のギャングたち」 「ユナイテッド93」 

「善き人」 「善き人のためのソナタ」 
「夜になるまえに」 「4ヶ月、3週と2日」 「40歳の童貞男」 

ら行

「ラースと、その彼女」 「ライアンの娘」 
「ライフ・イズ・ミラクル」
 「ライフ・オブ・パイ」 

「ラストキング・オブ・スコットランド」 「ラスト、コーション」 
「ラブ・アクチュアリー」 「ラム・ダイアリー」 

「リアル・スティール」 「リトル・ミス・サンシャイン」 
「リトル・ランボーズ」 「リンカーン」 

「ル・ブレ」 
「るろうに剣心」 「るろうに剣心 京都大火篇」 「るろうに剣心 伝説の最期篇」 

「レイヤー・ケーキ」 「レイン」 「レジェンド・オブ・ウォーリアー」 
「レジェンド・オブ・フォール」 「レスラー」 

「RED」 「レボリューショナリー・ロード」 「レ・ミゼラブル」 
「恋愛睡眠のすすめ」 「レンブラントの夜警」 

「ザ・ロード」 「ロード・オブ・ザ・クエスト」 「ローン・レンジャー」 
「ロビン・フッド」 「ロボット」  「ロング・エンゲージメント」  

わ行

「ワールド・ウォーZ」 「ワールド・オブ・ライズ」 
「わが教え子 ヒトラー」 「私がクマにキレた理由」 「ワルキューレ」

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番外編

映画のオリエンタリズム: 『ハリウッド100年のアラブ――魔法のランプからテロリストまで』(村山由美子)の感想のついでに、この本で取り上げられていなかった「西南アジア(人、地域)を扱った映画」を思いつく限り列挙。感想つき。『オーシャン・オブ・ファイヤー』『ドミノ』『クラッシュ』『インサイド・マン』ほか。 

あ~な行

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ハヤカワ文庫SF総解説

 11月20日(5日後です)に、『ハヤカワ文庫SF総解説』が刊行されます。今年の『SFマガジン』4月号、6月号、8月号に掲載された、ハヤカワ文庫SFの1番から2000番までの文字どおりの総解説が、1冊の本になります。
 解説を担当するのは大勢のSF作家や評論家。数えていませんが、とても大勢です。そして皆、SFを愛しています。愛の籠った解説の数々は、誉めている作品が読みたくなるのはもちろん、誉めていない作品でさえ、「そこまで言うなら、ちょっと読んでみたいかも」と思わされてしまいます。

 私が担当したのは、〈ホーカ〉シリーズ(『地球人のお荷物』『くたばれスネイクス!』『がんばれチャーリー』)、『スターシップと俳句』、『80年代SF傑作選』(上下巻)、『星ぼしの荒野から』の4点です。私のレビューは全般に誉めてるのか貶してるのか解りにくいらしいですが、4点とも誉めてます。
 
 SFの大海を渡る航海図として、是非どうぞ! 一生ものですよ。

『ハヤカワ文庫SF総解説』

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ジョン・ウィック

 今年に入ってアトピーがずいぶん改善して、春からは皮膚科通いもしなくて済み、例年症状が悪化する夏も乗り切れたんですが、暑さが去ったと思ったら数年ぶりに蕁麻疹が出ました。
 発疹が出ないタイプだったので蕁麻疹だと気づくのが遅れ、ようやく気づいて医者に行き、痒み止め(飲み薬と塗り薬)を処方してもらったのが先月末。どちらもアトピー用と同じですが、飲み薬のほうは半年ぶりで身体が合わなくなってたのか、意識が朦朧となって寝込みました。飲み薬が原因だと確認したわけではないのですが、2日飲んで2日寝込んだので、たぶんそうでしょう。
 ともあれ症状のほうはその2日でだいぶ改善したので、後は塗り薬だけでほぼ完治、というところまで漕ぎ着けたら、今度はノートパソコンが壊れました。1ヵ月半前に買ったばかりのくせに、CD、DVDの類の読み取りを断乎拒否しやがるようになりました。オーディオの再生ができないだけならまだしも、ファイルの保存もできないのでは仕事ができん。
 部品交換だけで済んだので4日で復旧しましたが、個々の災難としては小さくても、続けざまだとダメージ溜まるなあ。  

 そういうわけでその4日間は、PCなしでできる下調べのほか、カオス状態になっていたクローゼットの大整理を敢行したり、『ジョン・ウィック』を観に行ったりしていたのでした。いや、近場でやってる中で、観たいのがこれしかなかったんで。

「キアヌ完全復活!」の煽りに思わず納得してしまうのだが、あれ、でも『47 RONIN』はわりと最近だよね? 未見なんだが、やっぱ「なかったこと」にされてんの?
 まあとにかく、キアヌ・リーヴスという役者は「特徴がないのが特徴」で、しかも同じく特徴のない役者でもクリスチャン・ベールが「演技派」と呼ばれるのに対し、キアヌがそう呼ばれることはまずない。下手と言うんではないが、別にほかの役者でもいいじゃん、というレベル。
『スキャナー・ダークリー』はその「特徴のなさ」が役に嵌まっていた稀有な例だが、今回は車と犬だけが生き甲斐の孤独な男という、キアヌの私生活を彷彿とさせる、また別の意味での嵌まり役であった。
 以下、あるかなきかの如きのプロットについては『映画秘宝』で何か月も前から散々述べられているから、ネタバレ注意は要らんよな。  

 低迷しているかつてのスター俳優が、自らを髣髴とさせる役を演じて称賛される例は少なくないが、本作はそれらとは一線を画する。孤独で侘しく暮らすキアヌ(が演じるジョン・ウィック)は、実は引退した凄腕の殺し屋だった。そして「生き甲斐」の車と犬を奪われた時、復讐に燃えて「完全復活」するのである。
『スピード』と『マトリックス』を忘れられないファンにとっては、もちろんこちらの展開のほうが嬉しいに決まっている(私はファンでこそないが、『スピード』と『マトリックス』はもちろん忘れていない)。
 ちなみに脚本は当て書きでこそないが、キアヌが自分で見つけて気に入って監督のとこに持ち込んだものだそうである。

 この極めてシンプルかつ強力なプロットに乗って、後はどう殺していくか、である。一言で言うと格闘技+拳銃で、なんかガン・カタっぽいが、格闘技はカンフーや空手じゃなくて柔道やシステマのような関節技系。で、抑え込んでおいて至近距離から拳銃でとどめ。
 いや、確かに拳銃は中距離武器としても抑止力低いよな(にもかかわらず、それなりに抑止できているのは、撃たれた側が映画等の影響で「撃たれた! もう駄目だ!」と思い込んでしまうからだそうである)。御丁寧に急所に2発以上ぶち込んでるのもあって、なんかすごく「説得力」があるのであった。離れた場所(せいぜい数メートルだが)の敵を撃っても、後でわざわざとどめを加えに行くし。  

 つまり、敵を一人ひとり、関節技で抑え込んでは至近距離で銃弾をぶち込む、ということを延々繰り返し、その間にキアヌも殴られたり撃たれたりしてどんどんボロボロになって行く、という極めて泥臭いアクションなのだが、それにもかかわらずスタイリッシュに観せている。
 説得力があるが泥臭く、しかしスピーディーでスタイリッシュ、というとジェイソン・ボーンっぽいが、それとはまた違ったタイプである。とにかく楽しい1時間50分であった。

 そう言えば、ガン・カタはクリスチャン・ベールなんだよな。あの時は、決して「巧いんだけど、なぜか埋没している」なんてことはなく、ちゃんとキャラが立ってたのにな。「演技派」なんてやめて、こっちに戻ってきたほうがよくないか?   

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アーティスト

『雨に唄えば』はサイレントからトーキーへの移行期のハリウッドを描いたミュージカルだが、同じ題材を「サイレント」に仕立てたのが本作である。

 サイレントのスター俳優ヴァレンティン(名前からしてルドルフ・ヴァレンティノを思わせる)は、声が悪いとか訛りが強いといった理由ではなく、「芸術的見地」(もしくは単に好きになれない)から、トーキー化から取り残され、凋落する。
 同じ理由でサイレントにこだわり続けたのがチャップリンで、こちらはヴァレンティンと違ってしばらくはサイレント映画を撮り続けることができたのだが、トーキー化からほんの数年で俳優たちがパントマイムの演技を忘れてしまった、というようなことが彼の自伝に確か書かれていた。

 というわけで、1920年代末から30年代初めの映画の演技を、2010年代に再現するのは結構大変だったろうと思われる。しかもこれはフランス映画なので、「作り込み」はさらに念が入っているわけだ(主役2人以外の主なキャストはハリウッド俳優だが)。
 フランス人による「古き良きハリウッド」への郷愁、と単純に見ていいんだろうか。史実では当時のフランスは、国を挙げてハリウッド映画を締め出そうと四苦八苦していたんだが。

 ヴァレンティンの忠実な運転手役がジェームズ・クロムウェル。家父長的なキャラじゃないジジェームズ・クロムウェルって初めて観たが、結構可愛いじゃないか。

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