アーティスト
『雨に唄えば』はサイレントからトーキーへの移行期のハリウッドを描いたミュージカルだが、同じ題材を「サイレント」に仕立てたのが本作である。
サイレントのスター俳優ヴァレンティン(名前からしてルドルフ・ヴァレンティノを思わせる)は、声が悪いとか訛りが強いといった理由ではなく、「芸術的見地」(もしくは単に好きになれない)から、トーキー化から取り残され、凋落する。
同じ理由でサイレントにこだわり続けたのがチャップリンで、こちらはヴァレンティンと違ってしばらくはサイレント映画を撮り続けることができたのだが、トーキー化からほんの数年で俳優たちがパントマイムの演技を忘れてしまった、というようなことが彼の自伝に確か書かれていた。
というわけで、1920年代末から30年代初めの映画の演技を、2010年代に再現するのは結構大変だったろうと思われる。しかもこれはフランス映画なので、「作り込み」はさらに念が入っているわけだ(主役2人以外の主なキャストはハリウッド俳優だが)。
フランス人による「古き良きハリウッド」への郷愁、と単純に見ていいんだろうか。史実では当時のフランスは、国を挙げてハリウッド映画を締め出そうと四苦八苦していたんだが。
ヴァレンティンの忠実な運転手役がジェームズ・クロムウェル。家父長的なキャラじゃないジジェームズ・クロムウェルって初めて観たが、結構可愛いじゃないか。
| 固定リンク
« 屍者の帝国 | トップページ | ジョン・ウィック »