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近況と御礼

 たいへん御無沙汰しております。とりあえず生きてます。

 一昨年の後半から徐々に調子が悪くなって、昨年初めにはデビュー以来最悪のスランプに落ち込み、精神状態はどん底でした。どれくらいどん底かと言うと、自分で小説を書けないのを通り越して、人様の書いた小説を読むことすらできなくなったほどです。

 小説を読めなくなったのはこれまでの人生にも一度あって、高校三年の時から七、八年続きました(一冊も読まなかったわけではないけど、年平均数冊)。幸い、二回目はそれほど長くはなく、せいぜい数週間で抜け出せたし、その後は創作意欲も回復しつつあったんですが、今度は健康状態が悪化してしまいました。

 それでもどうにかこうにか上向き加減になりつつあった今年2月、『SFが読みたい! 2017年版』の特別企画「2010年代前期SFベスト30」で『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』が国内篇30位にランクインしたのですが、その頁(132)を見た途端、猛然と元気になりまして。

SFが読みたい!』ではもう一つの特別企画として、「2017年のわたし」として、2010年以降の「ベストSF国内篇」の10位以内に入った作家としてコメントを寄せさせていただいているのですが、それを書いた時はまだ「どうにかこうにか上向き加減」でしかなく、執筆中の長篇二本の進み具合も遅々としたものでした。

 ところが132頁を見たその日から、長篇二本のうち一本を猛然と書き始めたわけです。そしておよそ一カ月でおよそ150(清書した分。未清書も含めれば数百枚)を書き上げました。あ、ちなみにコメントに書いた「『ユートピアを目指さなかったディストピアはない』というテーマを追求した近未来もの」と「イスラム神秘主義を素材に、ジャンルとしてはファンタジイに見せかけた歴史もの、に見せかけたファンタジイというよくわからない代物」の後者のほうです。

 未清書ですが結末まで話は繋がり、清書分は全四章の予定のうち第二章の初めまで、分量としても四分の一強(予定)まで出来上がったわけで、この調子なら途中で補足の調べ物を挟んでも遅くとも夏までには脱稿できる、そしたら投票してくださった方々への御礼も兼ねてブログで報告しよう、とか目論んでいたのでした。で、切りのいいところまで書けたし、と補足の下調べのため、いったん執筆を中断したところ……アトピーが劇的に悪化しまして。

 実は昨年春以来の身体の不調は、主にアトピー性皮膚炎の悪化が原因なのでした。たかが皮膚一枚のことなんですが、生まれてこの方、悪化と快方を繰り返していたために皮膚が脆くなって、ついにはちょっと掻いただけで爛れるようになり、薬も効きにくくなってしまいました。症状が悪化すると痒みと痛みで眠れなくなります。

数年前に悪化した時は、昼間は痒みが多少マシなので、昼夜を逆転させてどうにかしのぎましたが(朝型なんで睡眠時間は確保できても非常につらかったですが、連作『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』を完成させることができました)、もはや昼夜を問わず痒くて痛くてほとんど眠れない。切れ切れにうとうとするのがやっと。それが何日も続くと、まともにものを考えることもできなくなり、体調もボロボロになる。症状が快方に向かって痒みと痛みが治まってきても、体調が回復するのには何週間もかかる。

 昨春以来、そういう状況に何度も陥ってきたのですが、原因はというと、「季節の変わり目」とか「ちょっと生活が不規則になってた」くらいしか思い当たらないのでした。スランプという精神的なストレスも関係していたのかは、自分でもよくわかりません。

 で、今春、一カ月余り睡眠時間も削ってバリバリと書き続けていたのを一時中断した途端、不規則な生活が祟ったのか、はたまた気が緩んだせいか、これまで以上に派手にアトピーが悪化しまして。

 いやほんと、「劇的」「派手」という形容が大袈裟でなく、何しろ最終的には全身から血と血漿が滴り落ち(グロいので伏せる)、痛みで動くことさえままならず、長期の不眠で常に朦朧としている有様で、外見も中身もまさに生ける屍。

 悲惨だゾンビだというのは今だから思えることで、患ってる最中は自分の状態の把握すらできてなかったんで、つらいと思う余裕もなかったんですが。

 毎回そうなんですが、快方に向かって再び眠れるようになって、まともに思考ができるようになってくる時期が一番つらいです。ああ、また時間を無駄にしてしまった、と。またアトピーを悪化させるのが怖いので、遅れを取り戻すための無理もできない。

昨年はそうしてアトピーに苦しんでいるか落ち込んでいるかという状態だったんですが、とりあえず今は、落ち込むのも時間の無駄、と思えるまでには回復しました。とにかく心身ともにストレスを溜めないように生きてます。執筆は頑張りすぎると身体に負担がかかるし、かといって書かない・書けないと心に負担がかかるので、ぼちぼちやってます。

 そういうわけで、いつまでにできると約束はできないし、2010年代前期SFベスト30で投票してくださった皆様への御礼も完全に時機を逸してしまったので、書くことがないからという理由でブログを放置してきたわけですが、どうも心配してくださる方もいらっしゃるようですし、とるもとりあえずも近況と御礼だけでも、と。

 改めまして、たいへんたいへん遅ればせながら、アンケートで『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』を挙げてくださった皆様、本当にありがとうございました。お蔭さまで心は元気になれました(身体はついてこられませんでしたが)。今書いている「ファンタジイに見せかけた歴史もの、に見せかけたファンタジイ、に見せかけたメタフィクション、に見せかけた何か」が完成したら、もう一つの近未来ものも完成させます。一日でも早く再びお目にかかれるよう、頑張りすぎないように頑張ります。

 ところで、近況や活動報告だけでなく、このブログの事実上のメインである映画レビューも止まってるわけですが、こちらについては心身の不調とは関係ありません。

 そもそもブログに映画(偶には漫画や小説なども)のレビューを上げていたのは、私は昔から「小説の感想」を書くのがものすごく苦手で、小説家なのにそれはまずいだろう、いずれ小説レビューの仕事が来た時のために(そういう依頼が来る前から)、まだしも書きやすい映画レビューで「練習」しておこう、という目的があったからなのでした。

 で、「練習」を続けるうちに、めでたく小説や映画のレビューのお仕事をぽつぽついただくことになり、四本を寄稿した『ハヤカワ文庫SF総解説』の出た2015年晩秋、「あれ、私もう小説レビュー苦手じゃなくなってるんじゃない?」と思った瞬間、それ以上「練習」を続ける気がきれいさっぱりなくなってしまったのでした。うーん、我ながらなんというか……

 と言いつつ、しばらくレビューの仕事はしてないわけですが、今後また機会があって、「あ、やっぱりまだ苦手かもしれない」となったら、きっと「練習」を再開するでしょう。では。

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