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名言だそうですよ。

 ゾラの「スルディス夫人」(『オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家』所収)とゴードン・R・ディクスンの『こちら異星人対策局』の「ウィルフ」のエピソードで、欧米文化には「小市民的道徳を押し付けて男を矮小化する女」というステレオタイプがあるんじゃないかと思い至ったのが、たぶん1年くらい前。
 そこから折りを見てちょっとずつ調べているうちに行き当たったのが、ロマン・ロラン(1866-1944)の「名言」とされる次の言葉である。

 女性の愛情は、天才を飼い慣らし、平準化し、枝を切り、削り、香りをつけることに専念する。そして、ついには天才を自分の感受性、小さな虚栄心、平凡さ、それに自分たちの社交界の平凡さと同程度の者にしてしまう。

 ……いや、名言か、これ?
 という疑問はさておき、「ロマン・ロラン 名言」でググると、多くのサイトで見つかる言葉である。ロマン・ロランの「名言」を10以上紹介しているサイトなら、まず載っている。出典は『ジャン・クリストフ』(1903-1912)だそうだが、大長編なので確認してない。
 原文(仏語)もチェックしたかったんだが、併記してあるところは一つも見つけられなかった。英語サイトなら、と「romain rolland quotes」でググったが(仏語サイトをチェックできるだけの語学力はない)、この「名言」自体、発見できませんでした。ロマン・ロランの名言を紹介している英語サイトもたくさんあって、30も40も50も紹介しているところも少なくなかったんだが。

 うん、ポリティカル・コレクトネス的には、どう考えたって「名言」じゃないよね、日本ではなんの疑問もなく「名言」扱いなのって……いや、お蔭で知ることができたしね。現代の価値観にそぐわないからって「なかったこと」にするのはよくありませんね、いや、掲載した方々は「名言」だという認識なわけですが。
 ロマン・ロランはこの「名言」と表裏をなす「名言」も残している。

  男性は作品を創る。しかし女性は男性を創る。

 これも『ジャン・クリストフ』からだそうだ。これもまた英語でググっても見つけられないが、日本人なら「女性賛美の名言」だと認識しそうですね、てゆうか明らかにそういう認識で紹介してるサイトは一つならずあったし。てゆうか、一つ目の「名言」より掲載サイトが少ないのはそのせいか?
 とにもかくにも、この二つ目の「名言」が「男性を精神的・道徳的に導く女性」像を表現しているのに対し、一つ目の「名言」はその裏面である「男性に小市民的道徳を押し付けて矮小化する女性」像を表現しているのは明らかだ。フランス語で「天才」(genie アクセント記号は省略しました)って男性名詞だし。

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